星乱拳客伝 外伝 三つ目 廻国編

星乱拳客伝 外伝 三つ目 廻国編

二の巻


第4章


「さて、先にどちらから片付けましょうか?」

朽葉の言葉。

(どちら。。。ってどちらだ?)

いくら捜しても、この場に相応しい言葉は見つからなかった。

「・・・っと、ですね」

蘭丸がなんとかそこまで言った時、

「『こっち』の用件は聞いていないようですね」

朽葉氏は茶封筒をぽんぽんと指で叩いて言う。
親戚の子供とお茶でも飲みながら話しているかのような口ぶりである。

「例の文献の件でしょうから、どちらにせよ即答はできませんしね」
「とりあえず鈴音の様子を診させてもらいましょうかね」

老人は無駄のない動きで立ちあがると庭に置いておいた鈴音の『櫃』へ向かった。

「立たせてもらえますかな?」

その時、老人は老人のまま別の人物になった。
職人モードに切り替えたのである。

「はい」

奇妙な緊張感を覚えつつも白い人型を思った蘭丸。

タタンタタタタタタ・・・

数秒で四角い箱は白い巨人と化していた。

「このまま闘われたと聞きましたが?」

だらりと奇妙な角度でぶら下がった巨人の右肘から先。

「はい、ちょっとした事情でこのまま闘わざるを得なかったもので・・・」

壊れているとは知らず鈴音を持ち出したのは蘭丸であった。

「そうですか。。。見たところ大した損傷もないようだし2、3日も預かれば元通りでしょう」

それでかまいませんか?と問う朽葉氏にお願いしますと蘭丸が頭を下げたその時であった。

「お待ちください」

凛とした声は女性の声であった。



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