星乱拳客伝 外伝 三つ目 廻国編

星乱拳客伝 外伝 三つ目 廻国編

一の巻


第5章


事務所から少し離れた雑居ビル。
事務所の雑居ビルより、少々汚く、少々広い。
仮契約を済ませた蘭丸を小桜が先導してヒョウ局の倉庫へ向かう。

「おにぃさん。。。じゃなくて、坂崎さんの『歩ヒョウ』を一度見せていただけますか?」
「契約している人の歩ヒョウは写真を撮らせてもらうことになってるんですよ、急ぎじゃありませんけどね」

「それが、お恥ずかしい話なんですが、持ってないんですよ『歩ヒョウ』」

「ほぅ、そういう廻国のしかたもあるんですね」
「あ、気に障ったらゴメンナサイね、私もそっちの世界には疎くて。。。」
「そうだ、もしよかったら歩ヒョウが3つばかし倉庫に転がってるんで使っちゃってくださいよ」

(梅田の言ってたヒョウ師3人分の歩ヒョウか。。。)

「いいんですか?」

「ええ、置いておいても誰も使いませんし、どぞどぞ」

手をひらひらさせながら話をする小桜に苦笑しながらついて行く蘭丸。

「はいりまーす」

シャッターの閉まった雑居ビルのドアを開けると中に入っていった小桜。
中から顔を出す小桜。

「どぞ、はいってください」

そこはもともと店舗であったのだろう雑居ビルの一階であった。
並んだスチールの棚には部品や工具が整然と並び、広いスペースには車や機械類が並んでいた。

(おっ これがそうか?)
(とりあえず後で見せてもらうか。。。)
車の脇に白・緑・赤3つの櫃が置かれていた。

「坂崎さーん ちょっときてくださーい」

スチール棚の奥で小桜が呼んでいる。
周囲を見まわしながら声の方へ行くと、もう一人の男がいた。
40台後半ってところだろうか、短髪に白髪の混じり始めた、いかついオヤジ。

「こちらメカニックのハンスさん。みんなにはオヤッサンって呼ばれてるですよ」

(なるほど確かにオヤッサンだな)

「サカ。。ザキですよろしく」

まだ自分の名前に馴れない蘭丸。
差し出した右手を分厚い右手が迎えた。

「よろしくな」

ハンスがニヤリと笑うと愛嬌のあるヒグマのようであった。

「で、ザクよ。あの歩ヒョウどうするよ?」

ハンスの言葉に小桜は自分を指差し、

「そそ、ちなみにボクはザクって呼ばれてます」

小桜は蘭丸からハンスへ視線を移す

「歩ヒョウなんですけど、坂崎さんに使ってもらおうかと思ってるんだけど。。。見てみます?」

蘭丸の返事を待たずに歩き出す小桜
さっき蘭丸が目をつけた櫃の方へ歩き出す。
と、ぴこぴこぴこぴこ・・・小桜の携帯が鳴る。

「はい、小桜です」

歩きながら携帯に出る。

「!。。。わかりました場所は携帯に転送お願いします」

小走りに櫃の横にあった車に向かう小桜。

「オヤッサン、僕のオモチャ、車に入ってますかー?」

そう叫んで、車のドアを開ける。

「ああ、いつものトコに置いてある」

後ろでハンスの叫び声が聞こえる。

「坂崎さん、これから仕事です、一緒に来ますか?」

「ああ、もちろんだ」

同意した蘭丸が助手席の方へ向かいかけてから、車の後部へ移動した。

「後ろ開けてくれ」

蘭丸の隣には白っぽい櫃があった。



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