星乱拳客伝 外伝 三つ目 廻国編
一の巻
第2章
藤十郎が天道のもとを訪ねたその一週間後。
コロニー「エイジア」
上泉武館跡。
(ホントになくなってやがる)
巨大な門がオブジェのように立っているその先はきれいに新地になっている上泉武館。
ぼーっと立っている蘭丸の肩をトトンと叩く者があった。
「お兄さんも上泉さんのとこに用事かい?」
蘭丸が振り返ると細身の優男(やさおとこ)。
切れ長の目と東洋系で色白の男であった。
「いや、用事ってほどのことでもないんだが。。。」
「まったく困ったもんだね、まさかこんなことになってる。。。ぴこぴこぴこぴこ」
携帯電話が鳴り、ゴメンよと電話に出る男。
「局長ですか?こういうことは。。。え?そりゃないんじゃない?」
「わかりましたよ、ハイハイ。。。ハイ」
携帯電話をたたみながら肩をすくめる男。
妙に様になっている。
「ウチの局長の連絡ミスだそうで、まいっちゃうよまったく。。。」
「いま、局長って言ったよな?それってヒョウ局かい?」
行く先を見失いかけていた蘭丸は聞き逃さなかった。
「そそ、ヒョウ局っていっても、小さい局でね、上泉さんとこの助っ人とか地元コロニーの何でも屋ってとこだね。大きい声じゃいえないけど。。。いまどき『ヒョウ局』ってのもね」
男がふざけたように言う。
「迷惑じゃなければ、ヒョウ局までつれていっちゃくれないか?」
「仕事の依頼かい?」
「いや。。。ヒョウ局に興味があってね」
「あ。。。お兄さんもしかして『ヒョウ師』?」
蘭丸の言葉にヤベッっという顔をした男。
「まぁ、そんなとこだ」
「あはは。。。変な事言っちゃったね、まぁ気にしないでよ」
「あっそうだ」
男はポケットを探り、
「ヒョウ局『円山(えんざん)』の小桜と申します、宜しくお願いします」
ふざけたような営業口調で男が言う。
名刺を差し出す男=小桜
「さかッ。。。」
蘭丸はそこまで名乗ってから固まった。
(マズい、ここで榊の名は名乗らない方がいいのか、ランメールって訳にも。。。)
無限のような一瞬の後、
「。。。き。。。です、よろしく」
結局名乗ってしまった蘭丸は、名刺を受け取り、ぎこちなく右手を差し出した。
「サカザキさん?よろしく」
(サカザキか。。。まぁランメールよりはいいだろう)
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