星乱拳客伝 外伝 三つ目 廻国編

星乱拳客伝 外伝 三つ目 廻国編

一の巻


第1章


蘭丸が天道を訪ねたその翌日。
昨日と同じく薄暗い天道の部屋。

「とんでもねぇ仕事紹介しやがるな」

昨日、蘭丸が立っていたその位置には、祖父である藤十郎が立っていた。

「その割には楽しそうですね」

天道は昨日と同じ位置に立っている。

「報告って程でもねぇんだが、最後はうやむやになっちまってるから。。。」

藤十郎の妙に律儀なところは蘭丸に似ている。。。いや、蘭丸が似ているのであるが。。。

「その辺はかまいませんよ、問題が起きるまでの報告はいただいていますし」
「他からの情報と併せても、クライアントとの契約上で違反事項がいくつも含まれていますから、あっ、藤十郎さんへのお支払いは満額致しますのでご安心ください」

自然に営業口調になるのを苦笑する天道に、ありがとよっと藤十郎。

「そうそう、先日、蘭丸さんがお見えになりましたよ」

「やっぱり、ここに来たか」

天道の言葉に納得したように藤十郎。

「廻国だそうですね」

部屋の中を移動する天道。

「らしいな、オレと入れ違いになって会っちゃいなんだが。。。」
「ガキだガキだと思ってたんだが、もうそんな年か。。。そりゃ、オレがジジイになる訳だな」

藤十郎が自嘲気味に言う。

「で、これを預かってくれと言われてるんですが」

ガチャリと壁のロッカーを開ける天道。

「へへっ、あのバカらしいやり方だな」

そこには櫃状態の『歩ヒョウ』=『レン』がある。

「あいつにはあいつのやり方があるんだろうし、あいつがあんたを見込んで頼んだんだろう、わりぃが預かっといてくれるかい?」

その答えを予想していたかのような天道の微笑であった。



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