星乱拳客伝 外伝 三つ目 廻国編

星乱拳客伝 外伝 三つ目 廻国編

一の巻


序章


三眼流のアミルと対戦したことで、自分の流派や闘う意味を考えるようになった蘭丸。
反抗期という訳でもないのだろうが、祖父であり師である藤十郎の元を離れてみたいと思うようになっていた。
と、言ってもあてなど無く、天道を尋ねる。

いつもの薄暗い部屋。
いつものように蘭丸を迎える天道。

「挨拶って訳でもないんだが、一応知らせておこうと思ってね。。。ちょっと旅に出ようかと思ってるんだ」

なぜかバツが悪そうに蘭丸。

「『廻国』ですか?」

天道は相変わらずの微笑を浮かべたままである。

「ジュンコク?」

聞き馴れない言葉であった。

「武者修業ってとこでしょうか、各地を旅して修行するというような意味です」

天道はさらりと言う。

「。。。ま、そんなとこだな」
(『廻国』かジジィも昔そんなこと言ってたな)
「で、頼みがあるんだが、こいつを預かっといてもらえるかな?」

後ろの櫃が見えるように一歩横へ移動する蘭丸。

(なるほど、そういう事ですか。蘭丸さんらしいですね)

見るものが見ればソレが本物の『三ッ目』だと気付くような代物を一介のヒョウ師が持って歩くのも可笑しな話。
藤十郎の影を背負ってもがく蘭丸らしい決断に微笑を深める天道。

「お預かりするのは構いませんよ、でも、いいんですか?」

「ああ、とりあえず最初からちゃんとしてみようかと思ってね」
「必要になったらまた取りにくるよ」

「そうですか。分かりました」

壁の方へ歩き出す天道。
壁板の一部を押すとドアになっているようでガチャリと開く。

「では、こちらに入れておいてください」
「私の居ないときにでも、取り出せるように言っておきますので必要なときにはご遠慮なくどうぞ」

わりぃな、と櫃状態の『歩ヒョウ』=『レン』を移動させる蘭丸

ガチャリとドアを閉めながら、どちらへ行かれるのですか?と問う天道。

「あてがある訳じゃないんだが、とりあえず上泉さんのところへいってみようと思ってる」

天道の微笑が揺れた。

「あっ。。。それは無理ですね」

「ん?」

「上泉武館は無くなっちゃいましたから」

「へ?」

「ちょっとしたゴタゴタがありましてね、睦美さんが閉めちゃったようで、もうないんですよ上泉武館」

(。。。なんだそりゃ。。。まさかウチのジジイ。。。関係ねぇよな。。。)
「そ。。。そうなのか。。。でも、まぁとりあえず行ってみるだけ行ってみるよ」

くるりと踵を返す蘭丸

「そいつ頼むぜ」

最後にそう言って部屋を出ていった蘭丸。

「カエルの子はカエル。。。いや、鬼の子は鬼。。。ですね」

天道は微笑を少し深くしていた。



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