星乱拳客伝 外伝 −三つ目−

星乱拳客伝 外伝 トーナメント編 第9話

Nightclubbing



第8章

強い。
それが眼前の『歩ヒョウ』に対する印象であった。
早く的確な攻撃であった。
バリエーションも多種多様。
その場で作り出しているのでは?と思わせる意表をついたコンビネーションは彼女の想定の枠を超えていた。
楽しい。
そんなゆとりなど無い筈であったが、それでも彼女はこの闘いを楽しんでいた。

(そうか、おまえもそうなのだな)

彼女はいわゆる天才であった。
子供の頃から、何にでも興味を持ち習得し・・・飽きてしまう。
彼女がビルドアームと出会ったのは9歳の時であった。
父と辺境のコロニーへバカンスに出かけた時である。
宿泊していたホテルの従業員のあいだで流行っていたビルドアーム同士の模擬戦を偶然みてしまった彼女はいつものように興味深々で近づいていった。
従業員たちもそんな彼女を面白がって彼女用にビルドアームに手を入れ操縦を教えたのである。
僅か一週間の滞在であったが、彼女がビルドアームの操縦を習得するには十分であった。
別れの日、若干9歳の女の子に勝てる者はいなくなっていたのである。
彼女は貪欲に闘いを欲した。
だが、9歳の女の子にビルドアームが与えられる訳もなく、代わりに親からの監視が厳しくなっていた。
しかし、このことが逆に彼女を本気にさせてしまうことになる。
さまざまな情報と駆け引きを使って彼女は彼女のビルドアームを手に入れるのである。
。。。蛇の道はなんとやら、このとき天道と知り合ったのだ。
ヘブンズ・ガーディアン
9歳の子供が操る無敵の巨人。
彼女は眼前に立つ者を次々と倒していった。
やがて誰も彼女の前に立つものがいなくなった時、彼女は姿を消す。
闘うことでした自分を表現できない哀れな獣。

(その獣につきあってやろう)

彼女もまた己の内に眠っている獣を開放し始める。
打ち合い蹴り合う。
蓄積してゆくダメージにフレームが軋み、警告灯が点灯する。
無視できるものは無視し、対処せねばならないものには最低限の対処をほどこして闘い続ける。
久々に開放した内なる獣を存分に暴れさせるのは気持ちがよかった。

(ふふっ)

彼女は不意に背後でナニモノかが低く笑うのを感じた。

(貴様。。。)

生涯で何度目かの感覚に恐怖と怒りと絶望を感じながら彼女の意識はナニモノかの意識に飲み込まれた。

(ワタシガ、カワッテヤロウ)

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『文句(もんく)があるなら、かかってこいよっ』
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