星乱拳客伝 外伝 −三つ目−
Nightclubbing
第4章
巨大な楕円形の闘技場。
その鋼の床は傷付き、補修され、また傷つき、オイルを染み込ませ、強烈な摩擦に火花を散らせていた。
巨大な楕円形の闘技場。
その壁は特殊加工の施された、分厚い硬質ラバーで覆われていた。
巨大な楕円形の闘技場。
その観客席はアリーナを取り囲む擂鉢状に設けられ、ドーム型の天井へと続いていた。
巨大な円形の闘技場。
その王者が今、決まろうとしている。
「これより第1回フェイロン・トーナメント決勝を行います」
暗闇の中に浮かび上がったのは、灰色のビルドアーム。
「REDコーナー 木星帰りの傭兵 天国の番人 ヘブンズ・ガーディアン」
灰色のビルドアームはそれが最低限の義務であるかのように、右手を上げた。
「BLUEコーナー 青銅の魔人『歩ヒョウ』ランメール」
対する三つ目の『歩ヒョウ』はリアクションすらとらない。
色とりどりの光が乱舞し、大音量の音楽がビリビリと響く中、『歩ヒョウ』=『レン』の中で蘭丸は醒めていた。
「全力でいってくださいね」
頭の中に天道の言葉が蘇る。
「彼女は普通に強いのとは少し違うんです。。。だから、それに気付いた時には遅いということを予めお知らせしておきます」
(彼女って、女なのか?)
それって何だよ、そう返すと、
「言葉では伝えにくいんですよ。。。強いとか、弱いとかいうことではなくて、我々とは違うところがあるんですよ」
「根本的なところがね」
天道という男の話術は天才的である。
その男が、言葉で表現できないようなモノとは?
「わかったよ」
全然分かっていないのにそういうと、
「気を付けてください」
全然分かっていないのが分かっている天道がいつもの微笑でそう言った。
「楽しみにしてますよ」
部屋を出る蘭丸が背中で聞いた言葉は天道の本心であるように思えた。
もっとも、それが本心であるかどうか確かめるすべなど蘭丸は持ち合わせていなっかたのであるが。。。
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『文句(もんく)があるなら、かかってこいよっ』
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