星乱拳客伝 外伝 −三つ目−
Nightclubbing
第1章
「という訳で、決勝戦に出ていただきたいのですが」
いつもの微笑を浮かべたまま、天道が説明する。
話はついているという言葉に、赤い髪と緑の髪の同じ顔をした双子のことが一瞬頭をよぎったが、もちろんその辺も抜かりはないのだろう。
しかし。。。
「今回のトーナメントで、ランメールはうちのジジイなんじゃねぇのか?」
この程度のことで困る筈もないが、言わずにはいられない。
ささやかな抵抗で勝ち得たのは、小さく肩をすくめさせることだけだった。
「そうなんですがね、藤十郎さんには他に用事ができたようで・・・」
(そういえば、どこかへ旅行にいくとか言ってたな・・・ハル爺さんに聞いてみるか)
「それに、本来ランメールは蘭丸さんな訳ですから、逆に間違いを正したという事にもなると思いませんか?」
その間違いを承知でマッチメークした男の台詞とは思えない。
「思わねぇな」
帰らせてもらうぜと続けて天道に背中を向けると、思わせぶりないつもの口調で、
「残念ですね、藤十郎さんでも勝てるかどうかの強敵だったのですが。。。」
後半が聞き取りにくいのは、もちろんわざとである。
「とりあえず、聞くだけ聞いておこうか」
自分の馬鹿さ加減にウンザリしながら蘭丸は踵を返した。
次章:第2章
『文句(もんく)があるなら、かかってこいよっ』
(c)General Works