星乱拳客伝 外伝 −三つ目−
Perfect Day
第5章
がちんがちん
とパンチの雨が降っていた。
その昔、暴れ牛に跨りその搭乗時間を競うロデオという競技があったという。
いま、フェイロンのアリーナで繰り広げられている光景は、見ようによっては緑の巨獣にまたがった人に見えなくも無い。
がちんがちん
打ち下ろされる拳の大半は防御されていた。
がちんがちん
しかし、そのうちの何発かはガードを潜り抜けている。
がちんがちんがちんがちん
職人が何かの作業に没頭するが如くの攻撃であった。
がちんがちん
ベリドット・タイクーンもなにもしていない訳ではない。
無論、この状況を打開すべく動き続けている。
がちんがちん
しかし、ヘブンズ・ガーディアンはその上を行っていた。
いかにも頼りなげな姿勢であるが、振り落とせない。
巧い。
ロデオと評したのはそのせいである。
「タマランねぇ」
腕組みの老人は榊藤十郎。
眼前の死闘の勝者と闘う『歩ヒョウ』の『ヒョウ師』(操縦者)である。
「申し訳ありませんが、『例』の件の返事はしてしまいましたので・・・」
隣で微笑を浮かべている青年は、この闘技場のオーナーである天道であった。
「わかってらぁな、こっち『も』ちぃとばかり面白そうだなと思ってよ」
パンパンと天道の尻を叩くと、横のテーブルに並んだ軽食を口に運んだ。
「俺が心配するこっちゃねーが、次どうする気だ?」
「決勝戦が不戦勝じゃ客が暴れるぜ」
物騒なことを藤十郎が口にする。
「そのことでしたら、もう手はうってありますのでご心配なく」
天道はいつもの微笑のままであった。
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『文句(もんく)があるなら、かかってこいよっ』
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