星乱拳客伝 外伝 −三つ目−

星乱拳客伝 外伝 トーナメント編 第7話

Perfect Day



第4章


「ReadyGo!」

盛り上がる闘技場の観客をよそにアリーナの中の巨人達は動かない。
長槍を構え彫像の如くベリドット・タイクーン。
自然体のままのヘブンズ・ガーディアン。

5秒

10秒

そろそろ観客が騒ぎ出す・・・そう思った頃。
動いたのはヘブンズ・ガーディアンであった。
ゆっくりとした動き。
まるで、散歩にでも出かけるかのような足取りであった。
向かう先は、眼前の緑の巨人。
緊張感のない様子は、たまたま街で知り合いにあった時を思わせた。
「よう元気かい」
その言葉の代わりに響いたのは「りゅん」という長槍の唸りであった。
空気が焦げそうな強烈かつ唐突なベリドット・タイクーンの突きであった。
それをふらりとかわすヘブンズ・ガーディアン。
両者の動きは空中を漂う羽毛とそれを掴もうとする動作に似ていた。
りゅん
 ふらり

   りゅん
ふらり
距離を詰めるヘブンズ・ガーディアンと、巨体に似合わぬ敏捷な動きで長槍を繰り出しつつ距離を保とうとするベリドット・タイクーン。
りゅん
りゅん
と、直線の軌道が不意に跳ね上がった。
槍を引かずに薙いだのである。
びひゃん
長槍がヘブンズ・ガーディアンに向かって弧を描く。
当たった・・・誰もがそう思った。
走り抜けた長槍を見た観客の中には上下に分断されたヘブンズ・ガーディアンの姿を想像したものさえいたのである。
しかし・・・
爬虫類が如く低い体勢のヘブンズ・ガーディアンがベリドット・タイクーンへ襲い掛かったのは、この瞬間。
四足歩行獣の動きであった。
咄嗟に逃げる緑の巨人、その足下に絡みつくようなタックル。
巧い
たまらず倒れる両者。。。次の瞬間、胴の上・・・いわゆるマウントポジション・・・にいたのはヘブンズ・ガーディアンであった。

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『文句(もんく)があるなら、かかってこいよっ』
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