星乱拳客伝 外伝 −三つ目−

星乱拳客伝 外伝 トーナメント編 第7話

Pumpkin And Honey Bunny



繋章


カツンカツン

薄暗い廊下に、いくつかの靴音が響く。

カツンカツン
カツッ・・・

大きな空間に出たのであろう、立ち止まった靴音が拡散した。

「これが用意させていただいたモノです」

聞き取りにくい陰気な声が言うのと、照明が灯るのは同時であった。
古い物語の魔法使いのような胡散臭いローブ姿が三人。
だぶっとした綿のシャツに少し太めのジーンズの老人が一人。
天井が高く広い空間であった。
小学校の体育館といった風の大きさであったが、無言の圧迫感は窓が無いことによるものである。
用意してあったものはその中心にあった。
黒く四角い箱。
大きさはそう・・・棺桶くらいであったろうか。

「ちょいと見せてもらうぜ」

老人がそう言うと、黒く四角い箱へ歩み寄った。
「へぇ」とか「ほぉ」とか言いながら、べたべた触り始めた老人を汚れ物でも見るように凝視する三対の目。

「使えそうですか?」

聞き取りにくい声の問いに、

「そんじゃ、立たせるぜ」

答えとも言えないような答えに続いて、オモチャ箱をひっくり返したような音が響いた。

カラカラカラカラ・・・

黒く四角い箱が別のものに変じてゆく。

カラカラカラカラ・・・

黒く、巨大な・・・人・・・

ローブ姿の三人がよろめくように、数歩下がった。

カラカラカラカラッ

そこには巨大な人型が蹲っていた。

「・・・これが『歩ヒョウ』というもの・・・ですか」

聞き取りにくい声には少なからず驚きの感情が含まれていた。

「なかなかいい造りしてやがるが、こいつはいただけねぇな」

黒い巨人の背中には、不吉な髑髏(ドクロ)が張り付いていた。

「せっかく用意してもらって悪ぃんだが、こっちを使わせてもらうよ」

3つのローブ姿が、藤十郎の言葉の意味を探るように沈黙する。
その時。。。

ばりばりっ

っと藤十郎の頭上2メートル付近から空間を引き裂くように現れたのはオレンジ色の右腕だった。
右肘、右上腕、右肩。。。続いて現れた頭部には角状のコブが、そして肩口から腕で向かって赤い犬が見える。

「なんだ。。。コレは。。。」

聞き取りにくい声は3つのローブの誰が発したものか。

「オレの『歩ヒョウ』=『緋狗(ヒク)』ってんだが、こいつじゃマジィかい?」

オレンジ色の巨人は藤十郎を庇うように右腕を伸ばすと角の付いた顔面をローブの男達へ向けた。
左右の腕と頭部、胸の辺りまで姿を表したオレンジ色の巨人は異空間から召還された悪魔のようであった。

『文句(もんく)があるなら、かかってこいよっ』
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