星乱拳客伝 外伝 −三つ目−

星乱拳客伝 外伝 トーナメント編 第7話

Pumpkin And Honey Bunny



第9章


アリーナの中央で仁王立ちの巨人がいた。
『歩ヒョウ』=『レン』=『ランメール』
それを操るのは榊藤十郎。
あの三つ目である。
アリーナの壁際に巨人がいた。
『ビルドアーム』=『エスパーダ』
それを操るのは榊蘭丸。
藤十郎の孫である。
両者のほぼ中間地点に転がるのは左腕。
『エスパーダ』の左腕であった。
三つ目らしい技で切り落とされた腕。
その正体は『歩ヒョウ』の足に装着されたワイヤーであった。
このワイヤー、ただのワイヤーではない。
極細の高分子ワイヤーにHTを編みこんだハイブリッドである。
風の噂でHTの糸を使う『ヒョウ師』がいると聞いた藤十郎は早速試してみた。
そして、

(使える)

と確信し、更に、己が流派の特器術である『飛燕』と組み合わせたのである。
しかし、ここで問題が発生した。
HTの強度の問題である。
もともとよく粘る物質であるHTではあったが、ワイヤー程度まで細くしてしまうと流石に強度は落ちる。
対人レベルでは充分な強度であっても対ビルドアームを想定した場合、使えないレベルになってしまう。
スケールの問題である。
いくつかの試作品を試すうちに絡みついた高分子ワイヤーとHTワイヤー・・・
そこで誕生したのが、このハイブリッドであった。
鋼の強度とHTの操作性を兼ね備えたワイヤー。
それをここまで隠しておいたのである。
藤十郎に言わせると使う必要がなかったからという事であろう。
かくして新しい必殺技のデビューとあいなった。
しかし、このハイブリッドワイヤーいまだ試作品といった段階で、三度ほど使うと切れてしまうのである。
・・・もって四度、最悪の場合は一度目で切れる・・・

(さて、どういう勝ち方にするかな・・・)

凶暴な老人は凶暴な思考を凶暴な笑顔の下に秘めていた。

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『文句(もんく)があるなら、かかってこいよっ』
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