星乱拳客伝 外伝 −三つ目−
Pumpkin And Honey Bunny
第8章
(そうでなくっちゃな)
へへんっ
と仁王立ちなのは藤十郎。
先ほどの少々大振りな右ハイキックはフェイクであった。
無論、当たればただでは済まない破壊力を秘めている。
蘭丸なら蹴りを掻い潜ってタックルにくるだろう。
そういう思いがあった。
いや、より正確に表現するなら、くりゃいいな、程度のものである。
実際の闘いにおいてある程度の予測や決めうちは必要だが、思い込みは致命的な判断ミスを誘う。
だから、その程度なのである。
かくして、藤十郎の予測は的中した。
蘭丸の低いタックルは藤十郎を捕らえようとしていた。
実際、ヤバイかなと思うくらい素早いタックルであった。
体制を崩しながらも仕掛けた罠を発動させる。
ぎゅん
空気を切り裂いたのは一本のワイヤーであった。
ガツンと衝撃を残してアリーナに転がったのはビルドアームの左腕。
危険を察知したのであろう蘭丸は身を引いたのである。
(やるじゃねぇか)
右ハイキックを放った時、その足の親指にワイヤーを仕掛けていたのである。
・・・ワイヤーの両端にリングが付いているものを両足の親指に装着していた・・・
客席のざわつきを全身に受けながら、ワイヤーをチェックする藤十郎。
(まだ使えるな・・・)
他者からは見えないであろう、ワイヤーを軽くくねらせて老人は不敵に微笑んだ。
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『文句(もんく)があるなら、かかってこいよっ』
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