星乱拳客伝 外伝 −三つ目−
Bomb Track
第16章
「なぁぁぁぁ」
何に対する絶叫であったのか、ブラッディ・オタスのスピーカーからの音声であった。
ギクシャクと動作に異常のある動きのオタスに向かって走るのは蘭丸=エスパーダである。
だが、こちらの人型もまたダメージがあるらしく、上体の動きに合わせて左腕がぶらぶらと動いていた。
がしゃぁぁん
強烈な右前蹴りであった。
走ってきたスピードそのままの真っ直ぐな右の前蹴りである。
ぎしぎしぃぃぃ
アリーナの壁に背中を預け、腹部をさらしていたブラッディ・オタス。
その腹部に足首までめり込んだ右足を引き抜き、拉(ひしゃ)げた腹部装甲の隙間に残った右手を掛けた蘭丸=エスパーダ。
ばきばきっ
鋼鉄、強化プラスティック、パイプやケーブルが破壊される様々な音。
胸部の隙間が広がったそのスペースに右手を潜り込ませる。
それは手術(オペ)を行う外科医の姿に見えた。
ばちばちっ
異音を響かせながら引き抜かれた蘭丸=エスパーダの右手には小さな部品とコードがうねっていた。
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『文句(もんく)があるなら、かかってこいよっ』
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