星乱拳客伝 外伝 −三つ目−
Bomb Track
第15章
5回転。
大型のビルド・アームが宙を舞っていた。
6回転。
赤と黒。
その毒々しい斑(まだら)は巨大な甲虫のようにも見える。
7回転。
回転の中心へとつながる巨大な尻尾。
その中心部には人型が尻尾を右脇に抱え込んでいた。
8回転。
回転の動力源である人型が不意に尻尾を離した。
がしゃぁぁぁん
大音響と地響き。
激突地点に近い客席では、よほどの衝撃だったのであろう興奮し立ち上がった観客が何人か転げ落ちていた。
勝負あり。
観客の誰もがそう思ったに違いない状況であった。
しかし、蘭丸=エスパーダは疾走に移っていた。
まだ、やるのか?
そういう思いの視線が疾走する人型に突き刺さる。
ぐらり、と動いたのはブラッディ・オタスである。
まだ、やれるのか?
そういう思いの視線がアリーナの壁に叩きつけられた赤と黒の斑に注がれた。
まだまだだ。
疾走するもの、動き出そうとするもの、置かれた状況はまったく違っていたが、その思いは同じであった。
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『文句(もんく)があるなら、かかってこいよっ』
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