Bomb Track

第１０章

十数メートルの距離を置いて対峙する一人と一匹。
赤と黒の斑（まだら）模様の右腕からは赤黒い液体がぼたりぼたりと滴っている。
巨大な毒虫に挑む拳士の図であった。

（次は何かなっ）

だんっ

と低い姿勢で踏み込むと一気に距離を詰める蘭丸＝エスパーダ。
蘭丸にとっての中途半端な距離はオタスの距離であった。

がしゃしゃ

とこれに対応したのはオタスである。
右後ろに下がりつつ、巨大な尻尾を振るうべく歪（いびつ）な円形の胴体を回転させる。
あと一歩。
蘭丸＝エスパーダがその距離を詰めたその瞬間。

バシュっっ

蘭丸の視界を赤黒い霧が覆った。
一瞬の躊躇。
しかし、ブラッディ・オタスにはその一瞬で十分であった。

ぎしゃぁぁぁん

横殴りの尻尾の一撃は蘭丸＝エスパーダをアリーナの壁まで吹き飛ばす威力を秘めていた。

「なぁぁぁぁっ」

オタスの歓喜の雄叫びに盛り上がる観衆。
七つ道具の一つ、オタスの毒霧であった。

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『文句（もんく）があるなら、かかってこいよっ』

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星乱拳客伝 外伝 －三つ目－

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