星乱拳客伝 外伝 −三つ目−
Bomb Track
第7章
フェイロン闘技場は沸いていた。
ブラッディ・オタスの試合である。
その毒々しいペイントと異形のビルド・アームは悪役(ヒール)であるにもかかわらず、フェイロンの人気者であった。
そして、いま、そのオタスが猛然と相手ビルド・アームに襲い掛かっている。
相手は防戦一方である。
「いいねぇ、そろそろ出してもいいころじゃないのアレ?」
「いや、まだ早いんじゃないのアレ」
オタスのベッティングチケットを握り締めた二人がニヤニヤしながら話している。
「アレってなんだい」
二人の会話に入ってきたのは人のよさそうな老人であった。
なんだ爺さん知らないのかいと二人はブラッディ・オタスの七つ道具と呼ばれている隠し武装について得意げに説明しだした。
へぇ、ほぉ、と一通り聞き終わると老人は、
「面白そうじゃねぇか、俺にヤラせてくれりゃもっと盛り上げたのによ」
とつぶやいた。
説明した二人の男はその言葉の意味を理解できないようであったが、老人の奇妙な存在感に言葉の意味を問うことはできなかった。
老人とは榊藤十郎。
その言葉を実現できる生き物である。
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『文句(もんく)があるなら、かかってこいよっ』
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