星乱拳客伝 外伝 −三つ目−
Bomb Track
第2章
低いベースの旋律が印象的であった。
それにあわせて聞き取りにくい口調で若者が社会に対する不満を並べている、そんな曲であった。
(けっ)
この曲を選んだのは赤い髪のエリである。
前回の打ち合わせで、なんとかいうアーティストのなんとかいう曲でいいかと問われたとき、
たしか「そのへんは任せた」とかなんとか言ったような気がする。
そのときは、入場曲で勝敗が変わるとは思っていなかったので、そんなことを言ったのである。
しかし、蘭丸の体の奥の方で何かがムズムズし始めていた。
一種の興奮状態であろうか。
どこかで味わった感覚・・・これは・・・このアリーナで味わった、闘争本能とでも言うべき感覚であった。
だんだんだん
鋼鉄の足が、
だんだんだん
暗い通路を進んでゆく。
だんだんだん
いつしかベースの旋律と歩調は同調していた。
「マッチメーカ・ツインズが送り込んできた新たなる刺客(マタドール)、エスパーダ」
闘技場のアナウンスに右拳を突き上げて答える蘭丸の顔には、いつもの猫科の肉食獣の笑みが浮かんでいた。
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『文句(もんく)があるなら、かかってこいよっ』
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