星乱拳客伝 外伝 −三つ目−
Bomb Track
序 章
「次ですね」
いつのまにかそこにいた老人に声をかける少年のように見える男。
「へへっ」
見ようによってはこちらのほうが少年のように見える笑顔を浮かべながら老人はテーブル上のミネラルウォーターをごくりとやった。
「かわいい孫の試合だ、ちゃんと見とかなきゃな」
へへへ、と続けてフルーツの盛り合わせから柑橘系であろう半月形を摘み上げ、かぶりついた。
いいモン食ってやがるなぁと別の果物を摘む姿は緊張感のかけらもみられない。
一般的な常識は通用しない老人。
彼は、榊藤十郎という名の生き物であった。
「そうですよ。次に対戦することになるかもしれませんからね」
少年の風貌の男もまた、底の知れない深みを持っていた。
このフェイロン闘技場の支配人であり、いくつかの別の顔を持つ男、天道歩である。
「そろそろのようですよ」
変わらぬ微笑のまま天道が言うと、照明が落ちた。
宴の始まりである。
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『文句(もんく)があるなら、かかってこいよっ』
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