星乱拳客伝 外伝 −三つ目−
Knockin'on Heaven's Door
第3章
異音であった。
金属が金属を引っ掻く強烈な騒音。
火花であった。
フェイロンの鋼の大地を超重量級のビルドアーム、そのキャタピラが高速回転しているのである。
他を圧倒する質量は対戦者の闘う気力を根こそぎ奪い取ってゆく。
その昔、荒れ狂う嵐の前に人々はただ耐えるだけだったという。
それに近い存在であった。
「トーナメントっつーから期待してたのに」
「ちょろそうだね」
鋼の要塞が如くビルドアームのコクピットのなかでターシャとミーシャが怒鳴る。
しかし、その会話とはおよそかけ離れた正確かつ敏捷な操作を行っている。
彼女らはプロなのである。
「行くよ」
「3」
「2」
「1」
振り下ろされる鉄拳は剛拳。
それは人の作り出す領域を超えているように感じられた。
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『文句(もんく)があるなら、かかってこいよっ』
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