星乱拳客伝 外伝 −三つ目−

星乱拳客伝 外伝 トーナメント編 第3話

Angel



第11章


強烈な加速であった。

ぎりり

と食いしばる奥歯が鳴る。
一瞬の加速。
しかし、その一瞬で勝負が決まってしまうことがある。
・・・いや、その一瞬を己がものとできる者が勝者と呼ばれるのである。
左脇に緑の長槍を見つつ空を駈ける一瞬。
右手の長剣が一閃すると、強烈な突きと化していた。

「他はまだまだだが、突きだけは一人前だな」

兄弟子の言葉が蘇える。
その日以来、来る日も来る日も突きの練習をした。
他では勝てそうな気がしなかった兄弟子に突きでなら勝てそうな気がしたからである。
兄弟子に勝つ。
そのことが、当時の彼の命題であった。
平均ではなく、何かに突出するということ。
彼の生き方そのものと同じであった。
それは彼のもつ危うさと同じ意味であり、その魅力ともまた同じ意味であった。
何か大きなものに立ち向かう。
そのときこの男は更に強力になるのである。

じゃぁ

叫びは突きを加速させた。


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『文句(もんく)があるなら、かかってこいよっ』
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