星乱拳客伝 外伝 −三つ目−

星乱拳客伝 外伝 トーナメント編 第3話

Angel



第9章


強い。
いや、巧いと言った方が近いだろうか。
当りそうだが、当たらない。
届きそうで、届かない。
圧倒的な差はないように感じはするが、己の感じることのできるその向こう側があるような気もする。
今まで闘ったことのない相手であった。
掴み所がない。
気が付くと、相手の独特のリズムで闘っている。
久しぶりの感覚であった。
こいつ強いな。
闘うことを職業とし始めてからだんだん薄れつつあったこの感覚。
あぁこれでいいのだ
と思う。
走り、避け、剣を振るう。
なんと単純であろう。
世の中はまだこんな奴がいたのだ。
歓喜であった。
まだまだ強くなれる。
そういった思いが螺旋を描きつつ己の内側から剣を振るわせた。

だん

と踏み込むと、白い機体はフワリと舞い上がった。
ヴァレンタインの十八番である。
が・・・
唐津がその好機を逃す筈がなく、その長槍は狙いたがわず空中の優美な機体へと伸びる。
その時であった。

ごっ

白いビルドアームの背中が火を噴いた。
爆発?
いや、それは小型のスクラムジェットエンジンの咆哮であった。
小さな羽根を模したパーツは単なる飾りではなかったのである。
それは、空中を疾走する白き天使の姿であった。


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『文句(もんく)があるなら、かかってこいよっ』
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