星乱拳客伝 外伝 −三つ目−

星乱拳客伝 外伝 トーナメント編 第3話

Angel



第7章


ぶん

と緑のビルドアームの槍がうなる。
いわゆる槍を扱(しご)くという動作である。
隙がない。
白いビルドアームのコクピットでB・H・ヴァレンタインは奥歯を噛みしめていた。
自分の間合いに踏み込むには、必ず、長槍の制空圏内を通らねばならない。
踏み込めない。
一見、それほど速そうに見えない槍が、ある一定の距離に近づくと突如として彼の行く手を阻む。
そうするうち、次第に形成されてゆく目に見えない円形のフィールド。
敵の間合いである。
ヤバイな・・・
この状況が?
いや、そうではない。
この状況をヤバイと考えている己がヤバイのだ。
今を楽しめ。
ベストを尽くす必要はない、ベターな選択をしろ。
ヴァレンタインの師、マスター・リードの言葉である。
大きく一歩下がると、ヴァレンタインは右手の長剣を一振りし、ゆっくりと構えた。
ゆくぞ。
そこには生傷の絶えなかった修行時代の男がいた。


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『文句(もんく)があるなら、かかってこいよっ』
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