星乱拳客伝 外伝 −三つ目−

星乱拳客伝 外伝 トーナメント編 第3話

Angel



第6章


噛み合っていない。
蘭丸にはそう見えた。
いままでの、漠然としたフェイロン風ともいうべき闘いから、
白と緑のビルドアームがおのれが得意とするかたちへ移行したことによって、
両者の闘い方に距離が生まれたのである。
だが、その距離が面白い。
そして、それこそが・・・

「最近、こういう試合は少なくなって少々悲しかったのですが」

いつの間にか隣に立っていた天道が、いつもの微笑のままつぶやく。
そう、これこそが、蘭丸の見たかった闘いであった。
フェイロンで勝つためのチューニングを施した同じような機体が同じように闘う。
実際、蘭丸の本業であるビルドアームの修理工場にもその手の機体をよく見かける。
このイベントが一般化するにつれ、だんだん薄れてゆくのであろう異物同士の闘いともいうべき試合であった。

「やっぱり、こうでなくっちゃね」

一瞬ではったが、珍しく天道の感情の揺らぎを感じた蘭丸は天道を振り返った。
だが、そこにはいつもの微笑を浮かべた天道の姿があるだけであった。

「試合開始時点とは少々状況が変わってきてますが、一勝負どうです?」

(やっぱり気のせいか・・・)
蘭丸は肩をすくめると、天道の言葉に答えることなく、アリーナへ視線を戻した。
一定の距離を置いて、対峙する白と緑のビルドアーム。
蘭丸の口元には、いつもの肉食獣の笑みが浮かんでいた。


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『文句(もんく)があるなら、かかってこいよっ』
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