星乱拳客伝 外伝 −三つ目−
Angel
第3章
「ぬん」
食い縛った奥歯の隙間から漏れる気合は苦渋に満ちていた。
ここは緑のビルドアームのコクピット。
その男の名は唐津宗助。
「ぬん」
レバーを倒し、スイッチを入れ、ペダルを踏む。
酷く煩雑な操作である筈なのに、この男は予め決められていた動作であるかの如く動いた。
「ちっ」
軽い舌打ちは、外部からの衝撃に続いた。
3つあるディスプレイのうち左の小さな画面に赤い文字が流れる。
それを一瞬、眼の端に捕らえると、右のコントロールパネルの中の小さなレバーを引き、
スイッチを2つばかりOFFにし、1つをONにした。
と、ディスプレイに映った赤い文字列が消えた。
何がどうなっているのか、唐津以外にはわかりようもないが消えた文字を確認するまでもないのか、
唐津はまた。
「ぬん」
と気合を入れた。
そしてその口元にかすかに浮かぶ微笑。
(出し惜しみはさせてくれんか・・・)
唐津の視線はコクピット左側に並んだいくつものスイッチの中の一つを一瞥すると、
迷うことなく『それ』を押した。
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『文句(もんく)があるなら、かかってこいよっ』
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