星乱拳客伝 外伝 −三つ目−

星乱拳客伝 外伝 トーナメント編 第3話

Angel



第1章


ガキィン

長槍と細身の長剣が火花を散らす。

ギィン

器用に長槍を避けるのは白いビルドアーム『スティールエンジェル』である。
試合開始より、ロングレンジから繰り出される緑のビルドアーム『ベリドットタイクーン』の長槍に白いビルドアームはなかなか近づけないようであった。

「どうですか、この対戦」

フェイロン闘技場のVIPルームで男は言った。
落ち着いた声ではあったが若い男であった。
名は、天道 歩(てんどう あゆむ)。
このフェイロン闘技場のオーナーである。

「あぁ」

聞いていないのが明らかな返事は、榊 蘭丸(さかき らんまる)。
このフェイロン闘技場で闘う闘士であり、天道とは因縁浅からぬ男である。

「どちらも、いいものを持っているんですが・・・」
「もう一皮剥ければ、と思いましてね」

高速で移動する白いビルドアームとそれを追う緑のビルドアームの長槍。

「あぁ」

蘭丸の返事はそっけない。

「まだまだ化ける可能性がありそうでしょう」

厳正な抽選で決まった筈の対戦カードはやはり『そういう』裏があるらしい。

「榊さん。どちらが勝つと思います?」

今度の天道の問いには興味があったのか、少し考える気配があった。

「そうだな・・・」

派手さは無いが、堅実で隙のない緑のビルドアーム。
どこか危うげながらも、華麗な動きで相手を翻弄する白いビルドアーム。
対戦オッズは白いビルドアーム『スティールエンジェル』の方に分があると出ているが、これは一部の熱狂的ファンによるものだと天道の言葉にはあった。

「俺の目に間違いがなけりゃ、あの白い奴・・・相当強ぇぞ」

蘭丸の言葉に、ほう・・・とどこか嬉しそうに天道。

「賭けますか?」

フェイロン賭博のオーナーからの申し出である。

「・・・いや、やめとこう。あんたにバクチで勝負するほど馬鹿じゃねぇよ」

眼下の闘いから目を逸らさずに蘭丸は言った。

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『文句(もんく)があるなら、かかってこいよっ』
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