星乱拳客伝 外伝 −三つ目−
MY FAVORITE MISTAKE
終章
ぱちぱちぱち・・・
蘭丸は背中で、天童の拍手を聞いていた。
「痺れますね」
「いや、途中の観客のブーイングにはどうなることかと思いました」
確かに。
蘭丸が藤十郎の孫でなかったら、いや、弟子でなかったらと言うべきか・・・
彼もまたそういう思いを胸に、眼下の闘いを見守っていたことだろう。
だが、彼は・・・彼だけは、違っていた。
(爺ぃ・・・魅せる闘いかた知ってやがる)
「しかし、さすが『三つ目』ですね。闘いを盛り上げる方法を良くご存知だ」
どうやら、ここにもう一人、藤十郎の技量を的確に見抜いている者がいたらしい。
「これでは、梅草兄弟が引き立て役になってしまいますね」
(よく言うぜ、この悪党が・・・)
心の中で悪態をつく蘭丸の耳にはフェイロン闘技場のランメールコールが防音ガラスの向こうから聞こえていた。
「続きまして、第1回フェイロントーナメント1回戦第2試合を行います」
宴は始まったばかりである。
完
『文句(もんく)があるなら、かかってこいよっ』
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