星乱拳客伝 外伝 −三つ目−
MY FAVORITE MISTAKE
第9章
巨大な鋼鉄の巨人が手にした巨大な斧に藤十郎は・・・一瞬ではあったが・・・目を奪われた。
(なんだ、こりゃ)
このフェイロン闘技場にいた観衆からも、様々な感情の入り混じったどよめきが聞こえる。
それは、実用性を無視した巨大さであった。
ようやく持ち上げた、と言った雰囲気の梅草兄弟のビルドアームの足元はふらついている。
(冗談だろう・・・おい)
ふらつく足でいったい、どんな攻撃をしようというのか、
そんな梅草兄弟をただ見つめるだけの碧い魔人は、「ニンジャイ・ボー」を片手に、まさに仁王立ちだった。
ある意味、戦意喪失と言ってもいい状態の藤十郎とは逆に梅草兄弟のビルドアームからはまたもや、けたたましいBGMが流れてきた。
「いざ行かん」
スピーカーからの音声にふらつく足が幾分シャキッとしたから不思議なものだ。
(様式美ってやつか?)
ガチャガチャとそれが決まったの動作なのであろう、BGMに合わせて足を踏み、重そうに斧を振り回す。
「必殺!」
(おっ、いよいよか?)
最後に一度、斧を大きく振り回すと頭上へ掲げた。
「仰天竜巻落し!!!」
右足を大きく踏み出し、頭上の巨大な斧を振り下ろす。
確かに、『必殺』『仰天』の破壊力であろう、但し・・・
当たれば、である。
頭上から迫る『必殺』の斧を見つめながら藤十郎は考えていた。
(この勝負、どう決着を付けたもんかな・・・)
『必殺』の斧の事など、どうでもいいのか藤十郎の頭はこの試合の終わり方・・・もちろん自分が勝つことになっている・・・のことで一杯らしい。
「ブレイク・ナウ」
梅草兄弟のビルドアームからの音声に、
カチリ
と何かのスイッチが入った。
その瞬間・・・
ゴッ
と斧が火を噴いた。
猛然と加速する凶暴な刃。
どうする藤十郎。
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『文句(もんく)があるなら、かかってこいよっ』
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