星乱拳客伝 外伝 −三つ目−
MY FAVORITE MISTAKE
第5章
ごう
と長剣が振り下ろされる。
(ケッ)
左斜め上から落ちてくる刃は榊藤十郎がよく言う『ジジイが散歩してる』スピードであった。
軽くステップバックしてこれを躱(かわ)すと、振り下ろされた長剣に左の下段回し蹴りを入れる。
バギリ
と砕けた刀身を周囲に撒き散らし、軸足を左足に換えると回転を加速させつつ右足を跳ね上げた。
ぎぃしぃぃぃぃ
梅草兄弟のビルドアームの腹部に藤十郎の右足刀がめり込み『歩ヒョウ』より一回り大きい巨体が吹っ飛んだ。
ドガン
と背中から長剣を取り出したコンテナに激突した梅草兄弟のビルドアーム。
尻餅をつきながら、
「なかなか、やるな」
スピーカーで、そう言った。
BGMはやられている時の音楽に変わっている。
(てめぇが弱すぎんだよ)
そして、間合いを詰めようとした藤十郎は動きを止めた。
(次はなんだ?)
またしても、後ろのコンテナから何かを取り出した梅草兄弟のビルドアーム。
「ニンジャイ・ハンマー」
突起物の付いた球体に長い鎖がついたいわゆる『○ンダム・ハンマー』のような代物である。
(まさか、あのリストの武器、全部使うつもりか?)
このトーナメントのルールとして、闘技場側が用意した武器以外を使用する場合、相手の許可が必要になっている。
数日前、藤十郎が確認した武器は十数個あった。
(中身なんざ碌(ろく)に見ちゃいなかったが・・・いろいろあった方が面白れぇ)
鎖をジャリジャリ言わせながら『ニンジャイ・ハンマー』を回転させ始めた梅草兄弟のビルドアーム。
「ハンマー・アターック」
スピーカーからの音声、もちろんBGMは攻撃モードである。
(ご丁寧なこって)
凶暴な鋼鉄の塊は、先ほどの長剣とは比べ物にならない猛スピードで藤十郎の『歩ヒョウ』=『レン』に迫っていた。
どうする、藤十郎。
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『文句(もんく)があるなら、かかってこいよっ』
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