星乱拳客伝 外伝 −三つ目−
MY FAVORITE MISTAKE
第3章
歓声と怒号がまるで生物のようにアリーナに押し寄せる。
フェイロン闘技場。
戦うことでしか己を表現できない奴等が集う場所である。
(なんだ、こりゃ?)
孫と、まったく同じ台詞を口にした老人。
榊藤十郎は何年かぶりの『歩ヒョウ』の感覚を楽しんでいるようであった。
(コスプレ・ビルドアームが相手じゃ調子が狂っちまうぜ)
足の先から胴、腕から指先、更には肩から首、頭のから髪の先までの感覚を丁寧に確認してゆく。
(それにこれじゃ、どう見たって俺が悪役だぜ)
方や、日曜日の朝のヒーローロボット。
方や、異形の『歩ヒョウ』である。
(まあ・・・悪役にゃ慣れてるがな・・・)
あの悪名高い『三つ目』である藤十郎には、蚊に食われたほどの影響もなかった。
(さて、開始の合図はたしか・・・)
「Ready GO」
闘技場に響いたアナウンス。
(そいつだ)
にやりと笑って『歩ヒョウ』=『レン』を走らせた藤十郎。
その口元には、かつて『三つ目』と呼ばれていた頃の笑みが浮かんでいた。
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『文句(もんく)があるなら、かかってこいよっ』
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