星乱拳客伝 外伝 −三つ目−

星乱拳客伝 外伝 トーナメント編 第2話

MY FAVORITE MISTAKE



第1章


(なんだか、久しぶりに・・・)

帰ってきたという表現を思い浮かべそうになった自分に苦笑したのは、榊蘭丸であった。
3戦。
フェイロンでの参戦数としては決して多いほうではないだろう、この数字。
しかし、フェイロン参戦以降・・・主に天道との付き会いである・・・の事を考えると因縁浅からぬ事は容易に想像できる。

「おや、藤十郎さんはどちらへ?」

後ろから声をかけてきたのは、天道歩であった。
相変わらずの口調なのは言うまでもない。

「下の方が面白そうだから、ちょっくら行ってくら・・・ってね」

お椀を伏せたような巨大な地下ドーム状のフェイロン闘技場。
ここはその天井・・・とまでは行かないが、かなり上のほう・・・付近に設置されたVIP用の個室である。

「そろそろ準備していただこうと呼びにきたのですが、少し遅かったようですね」

部屋に設置されているインターホンに何かを言ってから十数秒。
何らかの回答があったのだろう、ありがとうという言葉が小さく聞こえた。

「藤十郎さんは最前列で、ご覧になってるようです」

この広い闘技場から、わずかな時間でどうやって見つけ出したのか・・・最初っから目をつけられていたのかもしれないが・・・天道ならではの素早さである。

「こまった爺さんだろ?」

後ろにいる天道を振り返らずに言う蘭丸は天道が軽く肩を竦めるしぐさをするのを想像した。

「初めから分かっていたことです」

実際に肩を竦めるしぐさをした天道。

「フェイロン・トーナメントの1回戦、第1試合から不戦勝では格好がつきませんからね」
「至急、控え室に来ていただくように手配させていただきました」

いわんこっちゃない・・・という苦い笑いを浮かべた蘭丸。
しかし、その感情とは別のところで、祖父であり師匠である藤十郎の戦いを楽しみにしている蘭丸であった。

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『文句(もんく)があるなら、かかってこいよっ』
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