星乱拳客伝 外伝 −三つ目−
LIVEN' ON THE EDGE OF THE NIGHT
第11章
ごう
と風が唸る。
巨大な鋼鉄の物体が高速で移動することにより、そこにあった大気が悲鳴を上げるのである。
ぎりり
と奥歯を噛む。
地面に沈み込むようにダッシュしたビルドアームは、その搭乗者である蘭丸に猛烈なGをもたらした。
しかし・・・強く奥歯を噛んだ口元は不敵な笑みを形成していた。
(手加減はしねぇぞ、お嬢ちゃん)
姿勢を低く、上半身を丸めたその姿はラグビーやアメリカンフットボールの選手にも似ていた。
いわゆるショルダータックルというやつである。
この攻撃は予想外であったのかエリのビルドアームは右にステップアウトしつつ右手で蘭丸のビルドアームを捌いた。
さながら猛牛と闘牛士といったところであろうか。
しかし次の一瞬、蘭丸のビルドアームは更に上体を沈めると、その移動ベクトルを左へ変更し伸びあがってきたのである。
ぎしぃぃぃ
複雑にからみあった強烈なGが容赦なく蘭丸を襲う。
(くぬぅ・・・)
食いしばった歯のあいだがら意味をなさない言葉が漏れる。
ぎっしゃん
ギシギシという鋼の悲鳴を感じつつ蘭丸のビルドアームはエリのビルドアームに激突した。
ダメージを回避しようとしたのであろう、エリは自ら後方へ飛んでいた。
その空中で両手を蘭丸のビルドアームへと叩きつけた。
(蘭丸の攻撃でガードを跳ね上げられていたのである)
ガツッガツッ
2度、両拳を叩きつけたところで地面に倒れ込んだ。
エリが下、蘭丸が上。
しかも・・・
「マウント取られてるよ」
エリの操縦席のスピーカーからどこかで見ている誰かの声が警告した。
「しってるよ」
実際はそれどころではなかったのであるがとっさに返した。
ちっ、と舌討ちすると不用意な右拳を繰り出してしまった。
(しまった・・・)
エリがそう思ったときには、スピードの無い右拳は蘭丸の右手に取られ自らの左肩の上に押さえつけられた。
ちょうど自分の腕で自分の首を絞めているような形である。
同時に蘭丸は巨大なビルドアームの左手でエリのビルドアームの顔面を覆った。
「勝負あり。だな」
蘭丸の口調はおだやかですらあった。
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『文句(もんく)があるなら、かかってこいよっ』
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