星乱拳客伝 外伝 −三つ目−
LIVEN' ON THE EDGE OF THE NIGHT
第9章
機械の森に対峙する二体の巨人。
方や、優美な曲線をもつ白と青の巨人。
方や、無骨な直線で構成された褐色の巨人。
その距離は、7〜8メートル。
「そのポンコツ動くんでしょうね」
青と白のビルドアーム・・・エリである・・・がスピーカーから呼びかける。
「それを確かめる為に呼んだんだろう」
褐色のビルドアーム・・・蘭丸である・・・がスピーカーから返す。
次の刹那。
最初の一歩は、ほぼ同時であった。
そして、次の瞬間には互いの戦闘距離・・・ようするに『間合い』というやつである・・・に踏み込んでいた。
ぎぃん
蘭丸のビルドアームの右前蹴りを軽く払いながらエリのビルドアームが蘭丸の右側へ周り込もうとする。
速い・・・
様々な意味を含んだ数字や文字が蘭丸の視界を通り過ぎ、メインディスプレイはエリのビルドアームの残像を残していた。
(速ぇな、コイツ)
奥歯を噛みしめながら、ペダルを踏み込み、レバーを引き、スイッチを入れる。
実際の操縦はビデオゲームのようには行かないらしい。
煩雑この上ない操作をあらかじめ予定されていたかのようにこなして行く蘭丸は、エリの動きに合わせて、右へ回りつつバックステップを踏んだ。
更に・・・
優位な態勢にあったエリの攻撃に右中段蹴りを合わせるつもりだった蘭丸の動きは、その直前で止まっていた。
「やるじゃないの」
エリである。
「そっちこそ」
エリもまた蘭丸のカウンターを予測し左ローキックを途中でキャンセルしていたのである。
「なぁ、おい」
蘭丸の呼びかけに、
「なによ」
そっけないエリの返答。
「やっぱ・・・おもしれぇな、こういうの」
その笑顔が想像できそうな声音の蘭丸。
「バカじゃないの?」
エリの言葉は続く攻撃に掻き消され、蘭丸に届く事はなかった。
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『文句(もんく)があるなら、かかってこいよっ』
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