星乱拳客伝 外伝 −三つ目−

星乱拳客伝 外伝 トーナメント編 第1話

LIVEN' ON THE EDGE OF THE NIGHT



第7章


モーターの稼動音。
クラッチの滑る音。
ギアの噛みあう音。
鋼鉄の脚が鋼の大地を踏みしめる音。
微かに響くそれらの音だけで、蘭丸はやってくるビルド・アームの性能を分析した。
その評価は『極めて危険』であった。
慌てることなく、しかし、無駄な動きを一切省いた動きで蘭丸はトレーラーのドライバーズシートから荷台のビルド・アームのコックピットへ移動する。
危険な『音源』は依然、近づきつつあった。
このビルド・アームには数回しか搭乗した事がない筈であったが、蘭丸のオペレーションは熟練者のそれに等しかった。

(ひとつ、よろしくたのむぜ)

コックピットの中で、計器の明かりに照らされた蘭丸の顔には、あの猫科の肉食獣の笑みが浮かんでいた。
近づきつつあるビルド・アームをセンサーでスキャンしつつエマージェンシーモードで起動させる。
不機嫌そうだったモーター音が次第に軽快なそれに変じてゆき、赤色ばかりだったコントロールパネルまわりが緑色に染まる。
赤外線モード(起動が一番早いため緊急起動ではこのモードが選択される)から通常カメラモードに切り変わった。
映像の向こうで揺れるビルド・アームの姿を見て蘭丸の微笑はさらに深まった。
それは先月号の『ビルドアームズマガジン』でスクープされた、来春発売の新型ビルドアーム『風速(カゼハヤ)』のプロトタイプそっくりだったのである。
デニスのビルドアームに搭載されているデータベースに存在しない青と白を基調にした優美な曲線を持つビルドアームはゆっくりと、
だが、着実に迫りつつあった。

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『文句(もんく)があるなら、かかってこいよっ』
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