星乱拳客伝 外伝 −三つ目−
LIVEN' ON THE EDGE OF THE NIGHT
第5章
『とりあえずまっすぐ』進んでから10数秒後であった。
「次、左ね」
蘭丸のマッチメーカーであるエリは被っていた帽子を脱ぎ、赤いショートカットに手櫛をいれた。
一方、大型のトレーラーを器用に運転する蘭丸。
そんなことは当然とでもいうように、エリは右だの左だの次々に指示を出した。
エリの指示通りに角を曲がる事10数回。
距離にしてみれば、ほどんど進んではいない。
(こいつ、わざとか・・・)
蘭丸が疑い始めた頃であった。
「そこの、黄色いドラム缶の手前で止めて」
数メートル向こうの通路の右側に危険物を示すペイントが施された
黄色いドラム缶が置かれていた。
蘭丸がトレーラーを止めたのは、そのドラム缶の直前であった。
「ちょっと待ってて」
駆け降りたエリは何気無い風に周りを確認するとドラム缶の後ろに周り込んだ。
そして・・・消えた。
恐らくエリの吸い込まれた壁はホロなのであろう、残された蘭丸はただ待つしかなかった。
2、3分も待ったろうか、壁から斜めに上半身を出したエリは蘭丸に手を振っていた。
次の瞬間。
ガコン
軽い振動と共に壁がせりあがってきた。
いや、蘭丸のほうが下がっているのである。
少なからず驚いた蘭丸を見てニヤリと笑ったエリは再び壁に飲み込まれた。
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『文句(もんく)があるなら、かかってこいよっ』
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