星乱拳客伝 外伝 −三つ目−
LIVEN' ON THE EDGE OF THE NIGHT
第1章
「天童、後でごちゃごちゃ言われたくねぇから先に言っとくが、この爺さんに関わるとろくな事がないぞ」
俺は天童の横の席に移った爺さんを無視して言った。
「おい蘭丸。その言い方はねぇんじゃねえのか」
笑いながらの言葉だが、実際笑っているかどうかは当人しか分からない。
俺の長年の付きあいから推測するに、今はすこぶる機嫌がいいはずだから、この笑いは『たぶん』本物だろう。
まあまあ、と割って入った天童に遠慮した訳じゃないが、俺達は口を閉じた。
「藤十郎さんは蘭丸さんと私共の事をどこかでお聞きになったようで、先日事務局のほうにみえられましてね」
「その時、たまたまこの企画の検討をしていたのですが・・・」
天童の後を爺さんが、
「おもしろそうだから、俺もまぜてもらう事にしたって訳だ」
きっと現場では、今と同じ笑みを浮かべながら『俺にもやらせろ』とか何とか言ったに違いない。
天童は天童でそんな事でびくつくようなタマじゃない。
頭の中でどんなソロバンを弾いたのか知らねぇが、この二人が組んだってことに変わりない。
今のところ俺の考えたくない組み合わせの上位にランクされることは間違いないだろう。
「で、俺からは『レン』(『歩ヒョウ』の名前だ)を取り上げて、ビルド・アームで出場しろってか?」
「こちら側としては、藤十郎さんに『ランメール』として出場していただければ、それでOKなのですが、蘭丸さんにもお知らせしておこうと思いましてね。」
「前回までは、蘭丸さんが『ランメール』として出場されていた訳ですしね」
そうだ、この『ランメール』って間の抜けた名前だって、その時のマッチメーカーが『蘭丸』を間違えて登録したものだった。
ってことは、今回は・・・いつだってそうだが・・・別に出場しなくてもいいってことだな。
「なあ蘭丸、使い慣れてねぇ頭使うと、ろくなことがねぇぞ」
眉間にしわを寄せたまま、爺さんの方をにらむと、恐い恐いと笑いやがった。
自分の方が百倍も『恐い』くせに何言ってやがる。
「よし。ビルドアームでやってやろうじゃねぇか」
俺が言うと爺さんが男だねぇと茶化し、天童が契約書を取り出した。
「それでは、順番が逆になってしまいましたが蘭丸さんのマッチメーカーを紹介しましょう」
「おい、そりゃあんたがやるんじゃねぇのか?」
「フェイロン闘技場の規定で同じマッチメーカーの闘士同士の対戦は認められていないのです」
確かに。それじゃ試合に疑問がでてくる。
その手の疑いは常に付きまとってはいるが・・・
「もしトーナメントで藤十郎さんと蘭丸さんが対戦するようなことがあったら大変でしょう」
「ですから、私の信頼するマッチメーカーをご紹介します」
失礼と、天童が携帯電話のキーをいくつかプッシュして数分後、
そいつは現れた。
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『文句(もんく)があるなら、かかってこいよっ』
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