星乱拳客伝 外伝 −三つ目−

片や、決定的と思われた攻撃が無効になった『碧』の『歩ヒョウ』。
片や、左鉤爪を失った『緋』の『歩ヒョウ』。
これからの展開、
どちらが有利に闘いを進めるのか。

星乱拳客伝 外伝 −三つ目− 第12巻

TOMMY THE CAT



第16章 Sient Knight VIII
沈黙の騎士[

拳や脚で打つ打撃技(ストライキング)に対して関節を極める関節技(グラップリング)等をヒョウ術では『組みちぎり技』と呼んでいた。
重力というアンカーのない状態での打撃に対する拭いきれない不安は蘭丸に相手と組んだ状態での攻撃であるこの『組みちぎり技』を選択させた。
しかし、蘭丸の駆る『碧』の『歩ヒョウ』=『レン』の手元に残ったものは『緋』の『歩ヒョウ』の鉤爪であった。
20メートルほどの距離を置いて対峙する『緋』と『碧』の巨人。
勝負は振り出しに戻った。
左腕の鉤爪を失った『緋』の『歩ヒョウ』を不利とみるか、捕らえた相手を逃がした『碧』の『歩ヒョウ』を不利とみるか。
宇宙空間に浮かぶ巨大な岩盤の上に立つ両者。
先に動いたのは『碧』の『歩ヒョウ』 の蘭丸であった。
先程と同じく右手でワイヤーの付いた暗器を放った。
対する『緋』の『歩ヒョウ』は地を這うような動きでこれをかわす。
しかし、その動きを追うように暗器が進行方向を変えて行く。
右、左、右、左、・・・
左右両手から繰り出される蘭丸の攻撃は『緋』の『歩ヒョウ』を防戦一方に追いやっていた。
数分。いや、実際には数十秒であったろうこの攻防の末、蘭丸はついに『緋』の『歩ヒョウ』を捕らえた。
キリキリとワイヤーが手に食い込む感覚。
『緋』と『碧』。
両者の左手を繋いだ鋼の糸。
互いの力を試すかのように徐々に力が加わってゆく。
十数秒・・・
先に痺れを切らしたのは『緋』の『歩ヒョウ』であった。
右手の鉤爪を構えつつ地を蹴る。
と、その動きに合わせるように蘭丸の『歩ヒョウ』も動いた。
しかし、こちらは後ろへ・・・
そして『碧』の『歩ヒョウ』の右手からは暗器が放たれていた。
間合いの近さから咄嗟に『緋』の『歩ヒョウ』は右手の鉤爪でこれを弾いた。
次の瞬間、『しまった』という思いがあったのであろう『緋』の『歩ヒョウ』は右手に絡み付いている筈のワイヤーを意識した。
と、その刹那であった・・・

ぎしゃん

『歩ヒョウ』を構成する『HT鋼』のひしゃげる振動と、『歩ヒョウ』の神経とも言うべき『筋結い』の破壊される振動が両者に伝わった。
一瞬。
まさに一瞬の出来事であった。
蘭丸の『歩ヒョウ』=『レン』は暗器を放った直後、後退から前進へと移行しつつあり、
さらに『緋』の『歩ヒョウ』が飛来する暗器とそれに続くワイヤー
・・・実のところワイヤーは付いていなかったのであるが・・・
に気を取られている間に、強烈な右の前蹴りを放ったのである。
自らの加速力。
左手によるワイヤーの引きつけ。
さらには『緋』の『歩ヒョウ』のスピード。
それら全てを合わせた前蹴りの破壊力は『緋』の『歩ヒョウ』の左胸から肩あたりまでを粉砕していた。

(終わったな)

蘭丸の思いとは裏腹に『緋』の『歩ヒョウ』の動きは止まらなかった。
『緋』の『歩ヒョウ』を駆る『ヒョウ師』自身の命さえも危ういこの状態にあって尚、
『緋』の巨人は闘うことを止めなかったのである。





次章予告

瀕死の重傷を負って尚、闘いを止めようとしない『緋』の『歩ヒョウ』。
しかし、これ以上の闘いは・・・
『緋』の『歩ヒョウ』を止めるには、完全なる破壊をもってするしかないのか。
蘭丸の決断や如何に。

外伝 第12巻
次章:終章 Decide 決断

『文句(もんく)があるなら、かかってこいよっ』
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