星乱拳客伝 外伝 −三つ目−

突如、攻撃に転じた『緋』の『歩ヒョウ』
迎え討つは『碧』の『歩ヒョウ』=『レン』を駆る蘭丸。
宇宙空間での闘いを征するのは、
『碧』か
『緋』か

星乱拳客伝 外伝 −三つ目− 第12巻

TOMMY THE CAT



第15章 Sient Knight VII
沈黙の騎士Z

目前に巨大な貫手・・・いや、鉤爪が迫っていた。
腰の回転、そして十分に体重の乗った重い左の貫手であった。
しかし・・・
蘭丸にとってその動きは、予測範囲の動きであった。

(甘いな)

右手に握った『緋』の『歩ヒョウ』へと続くワイヤーを放棄し、迫り来る『緋』の貫手に自らの右手を添えると、両足でコロニーの外壁を蹴った。
ふわりと宙空に舞った蘭丸の『碧』の『歩ヒョウ』。
停滞のない一連の動きはスローに見えたが、その無駄のない動きは計算されたものであった。
そして次の瞬間には『緋』の『歩ヒョウ』の左腕は『碧』の『歩ヒョウ』の両足の間にあり『緋』の左腕は『碧』の右手に捕らえられていた。

びぎぅ

警告は無かった。
蘭丸は『緋』の『歩ヒョウ』の左腕の筋を破壊したのである。
組みちぎり技の一つ、『蔓折り』(かずらおり)で・・・
伝わる振動から、腕の筋の破壊を判断した蘭丸は『緋』の『歩ヒョウ』の次なる攻撃である右手の鉤爪を蹴り飛ばした。

(・・・?)

違和感であった。
破壊後、固定したままの『緋』の左腕が動いたのである。
それは、動きがあることに対する違和感ではない。
その動きが蘭丸の予想を超えていたのである。

(やられた・・・)

『緋』の『歩ヒョウ』の右鉤爪の攻撃を蹴り飛ばした蘭丸の『碧』の『歩ヒョウ』。
その瞬間、両者の間に距離が生まれたのである。
『緋』の『歩ヒョウ』の左鉤爪を『碧』の『歩ヒョウ』に固定したまま。

(堪らねぇな)

手元に残った鉤爪は『HT』で作られたパーツであった。
おそらく肘から先を筒状の固定具に取り付け、五指はそれぞれの爪に連動する仕組みであろう。
何本かの切断された筋が、その接合部から覗いていた。
『緋』の鉤爪を放り投げた『碧』の『歩ヒョウ』。
その時、『緋』の『歩ヒョウ』は右腕に絡みついたワイヤーを除去し終わったところであり、
そのワイヤーを投げ捨てる『緋』の『歩ヒョウ』の左手は通常の五指を備えたものであった。





次章予告

片や、決定的と思われた攻撃が無効になった『碧』の『歩ヒョウ』。
片や、左鉤爪を失った『緋』の『歩ヒョウ』。
これからの展開、
どちらが有利に闘いを進めるのか。

外伝 第12巻
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