星乱拳客伝 外伝 −三つ目−

『碧』と『緋』
二色の巨人を繋いだ一本の糸。
しかし、
両者にとってその糸は新たなる闘いの場でしかなかった。

星乱拳客伝 外伝 −三つ目− 第12巻

TOMMY THE CAT



第14章 Sient Knight VI
沈黙の騎士Y

『碧』と『緋』
二色の巨人を繋いでいるのは太さ10センチほどのワイヤーであった。
数本の超高分子鋼の糸を寄り合わせたこのワイヤーは物資の運搬やコロニー建設など幅広い分野で使われていた。
しかし、このような使い方をするのはこの男だけであろう。

「天道。赤い奴を捕まえたぜ」

吠えた蘭丸は、右手のワイヤーを引いた。
『緋』の『歩ヒョウ』へと続く鋼の糸に更なる力が加わる。
回転を続けるコロニーの外壁に立つ蘭丸の『碧』い『歩ヒョウ』は両足でふんばり、左手にも力を込めた。
左手・・・
そう、遠心力に逆らいつつコロニーの外壁に立っていられるのは、この左手のせいであった。
右手同様、左手からのびたワイヤーは『碧』の『歩ヒョウ』の脚下、コロニーの外壁へと打ちつけられていた。
蘭丸がこのコロニーに取りついた後、左拳を打ちつけた時のものであろう。

「逃ガサネエ」

きりきりと右手のワイヤーを引きながら『碧』の『歩ヒョウ』は明滅した。
『緋』の『歩ヒョウ』は右手に絡みついたワイヤーを外そうとするが、コロニーに掴まっている左手が使えないこの態勢では困難な作業であった。
しかし、この『綱引き』も長くは続かなかった。
『緋』の『歩ヒョウ』がワイヤーを引きつつコロニーの外壁を蹴ったのである。
宙空に舞った『緋』の『歩ヒョウ』はワイヤーに導かれるように『碧』の『歩ヒョウ』へと急接近する。
この間に右腕のワイヤーを外そうというのか、しかし、この距離では・・・
いや違う。『緋』の『歩ヒョウ』は、緩んだワイヤーを右手に巻き、更に引いたのである。
更なる加速は、次の攻撃の為であった。
そして右手と入れ変わりに突き出された左の貫手。
その先には頭上のコロニーに立つ『碧』の『歩ヒョウ』がいた。





次章予告

突如、攻撃に転じた『緋』の『歩ヒョウ』
迎え討つは『碧』の『歩ヒョウ』=『レン』を駆る蘭丸。
宇宙空間での闘いを征するのは、
『碧』か
『緋』か

外伝 第12巻
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