星乱拳客伝 外伝 −三つ目−

いかなる技か回転するコロニーの外壁に立った蘭丸の『歩ヒョウ』
対する『緋』の『歩ヒョウ』は未だ動かず。
はたして『緋』の『歩ヒョウ』を捉えることができるのか蘭丸よ・・・

星乱拳客伝 外伝 −三つ目− 第12巻

TOMMY THE CAT



第13章 Sient Knight V
沈黙の騎士X


中型の密閉型スペースコロニー『京香(ケイカ)』。
宇宙空間に浮かぶ巨大な鋼鉄の円筒である。
そのコロニーの外壁に何かがいた。
瞬きする間に見失ってしまいそうな『それ』は人型をしていた。
コロニーが桁違いの質量であるために『それ』は小さなゴミのようにみえたが、『それ』の大きさもまた5メートルはあろうかという巨人であった。
『碧』と『緋』
二体の巨人は20メートルほどの距離を置いて対峙していた。
『緋』の巨人はコロニーにしがみつき、
『碧』の巨人はあろうことかコロニーの外壁に立っていた。

チカッカッ

『碧』の巨人が瞬く。
『光信』とよばれる『歩ヒョウ』独特の通信法である。

「ユクゾ」

そういう意味であった。
次の瞬間、『碧』の『歩ヒョウ』の右手が振られた。
『緋』の『歩ヒョウ』まで約20メートル。
どう見ても、その拳の届く距離ではない。

ギラリ

と何かが光った。
振られた右手から何かが放たれたのである。
拳ほどの・・・といっても身長5メートルの巨人のものではあるが・・・金属性の物体。
『暗器』であった。
緩やかなカーブを描きつつ飛翔する暗器はコロニーの自転のせいであり、それを計算に入れた蘭丸の投擲(とうてき)の正確さは『緋』の『歩ヒョウ』が迫り来る暗器を右手で打ち払ったことでも明らかである。
その瞬間・・・『緋』の『歩ヒョウ』が『暗器』を打った瞬間、『碧』と『緋』の『歩ヒョウ』間を一筋の光の糸が波打ち煌いた。
『碧』の『歩ヒョウ』の『特器術』である『射綱』である。
よくみれば投擲した『暗器』には超高分子ワイヤーが繋がれており、その先は『碧』の『歩ヒョウ』の右手に収まっていた。
蘭丸は『暗器』が打たれる瞬間、そのワイヤーを引いたのである。
そして・・・

「天道。赤い奴を捕まえたぜ」

無線機に向かって吠えた蘭丸。
彼の駆る『碧』の『歩ヒョウ』の右手から伸びたワイヤーの先端部は、しっかりと『緋』の『歩ヒョウ』の右腕に巻きついていた。




次章予告

『碧』と『緋』
二色の巨人を繋いだ一本の糸。
しかし、
両者にとってその糸は新たなる闘いの場でしかなかった。

外伝 第12巻
次章:第14章 Sient Knight VI 沈黙の騎士Y

『文句(もんく)があるなら、かかってこいよっ』
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