星乱拳客伝 外伝 −三つ目−

舞台をコロニー外の宇宙空間に移し、闘いは始まった。
真空。無重力。巨大な岩盤。
そしてゆっくりと回転し続けるコロニー。
この特異な空間でいかなる闘いが繰り広げられるのか。

星乱拳客伝 外伝 −三つ目− 第12巻

TOMMY THE CAT



第11章 Sient Knight III
沈黙の騎士V

『緋』と『碧』の『歩ヒョウ』が急接近する。
ぶつかる。
・・・そう思った瞬間。
『緋』の『歩ヒョウ』は右手を振るい、
『碧』の『歩ヒョウ』は右前蹴りを放った。

がツッ

振動が身体を伝い、互いの運動ベクトルに別のベクトルが加わる。
『緋』の『歩ヒョウ』はコロニーへ『碧』の『歩ヒョウ』は岩盤へ、回転しながら落ちて行く。
『緋』の『歩ヒョウ』が両手脚でコロニー壁面に取りつくのと『碧』の『歩ヒョウ』が岩盤に右手から着地したのと、ほぼ同時であった。
両者が相手を求めて頭上を見上げる。
コロニーに貼りついた『緋』の『歩ヒョウ』はそのままコロニーの回転と共に移動しつつあった。

(野朗。また逃げるつもりか)

態勢を低くして岩盤の凹凸を足の指で掴(つか)むように移動する蘭丸の『歩ヒョウ』。
しかし、コロニーの回転は意外と速くその距離はなかなか縮まらない。
このままでは逃げられると思ったのか蘭丸の『歩ヒョウ』はコロニーに取り付くべく地(岩盤)を蹴った。
だが、コロニーの外壁は岩盤とは違い表面の凹凸が少ない。
いやそれ以前に、コロニーに人工重力を発生させる回転による遠心力はかなりのものであろう。
『緋』の『歩ヒョウ』が貼りついていられるのは、その長い腕に秘密がありそうだ。
また、動かないのもそのせいであろう。
何か策があるのか蘭丸よ。
宙空へと舞った『碧』の『歩ヒョウ』=『レン』の三つの眼は『緋』の『歩ヒョウ』を睨んでいた。





次章予告

コロニーに取り付くべく飛び出した蘭丸の『歩ヒョウ』=『レン』
その運動能力はコロニーの遠心力をも凌駕するのか。
果たして・・・

外伝 第12巻
次章:第12章 Sient Knight IV 沈黙の騎士W

『文句(もんく)があるなら、かかってこいよっ』
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