星乱拳客伝 外伝 −三つ目−

蘭丸の前に再び現れた『緋』の『歩ヒョウ』
その目的は・・・

星乱拳客伝 外伝 −三つ目− 第12巻

TOMMY THE CAT



第9章 Sient Knight I
沈黙の騎士T

静寂であった。
大気という名の音を伝える物質の存在しない場所。
コロニーとそれを取り囲む岩盤のあいだの狭隘な空間であった。
その巨大な岩盤の上に立つ物言わぬ二体の『巨人』=『歩ヒョウ』。
一方は『碧』であった。
5メートルはあろうかという巨体である。
青銅色の体と背中の白連はこの『歩ヒョウ』を大昔の仏像のように見せていた。
そして、もっとも印象的だったのはその頭部であった。
三つの目、束ねた頭髪。
通常『歩ヒョウ』の顔には目鼻口といったものはない。
頭髪など論外。異形であった。
もう一方は『緋』である。
『碧』の『歩ヒョウ』よりは、ひとまわり小さかったがやはり5メートルほどの『歩ヒョウ』である。
どこか非人間的にみえるのは両腕の肘から先が少し長すぎるからであった。
その若干前傾した姿勢は俊敏で獰猛な猿科の生物にも似ていた。
『碧』と『緋』、両者の距離は十数メートル。
いまだどちらの間合いでもない。
数十秒、いや実際には数秒であったろう微妙な睨み合いのあと、
『緋』の『歩ヒョウ』が明滅した。
『歩ヒョウ』独自の通信、『光信』である。
その内容は、

「我、闘イヲ求ム」

であった。
数日前、両者の頭上をゆっくり回転するコロニー『京香』のスクラップ置場で同じような場面があった。
ただし、闘いを仕掛けたのは『碧』の『歩ヒョウ』を駆る蘭丸であり、
対する『緋』の『歩ヒョウ』は逃げている。
今回もシャトルを逃がすための闘いである可能性が高い。
静寂の宇宙。
刻が止まったかのように動かない二体の巨人。
その頭上の巨大なコロニーだけがゆっくりと動いていた。





次章予告

宇宙空間で再び対峙した『碧』と『緋』の『歩ヒョウ』
仕掛けたのは『緋』の『歩ヒョウ』
一度は、逃げた相手からの申し出を受けるのか蘭丸よ。

外伝 第12巻
次章:第10章 Sient Knight II 沈黙の騎士U

『文句(もんく)があるなら、かかってこいよっ』
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