星乱拳客伝 外伝 −三つ目−

目前に連なる岩盤。
そこに探し求める宇宙船の姿はない。
しかし・・・
物言わぬ岩に何を見たのか蘭丸よ。
『トミー・ザ・キャット』その姿が、お前には見えるのか。

星乱拳客伝 外伝 −三つ目− 第12巻

TOMMY THE CAT



第7章 Unknown
見えない敵

闇の中の闇。
円筒形の密閉型コロニーとそれを取り囲む岩盤のあいだ、その5〜10メートルの狭隘(きょうあい)な空間には闇が満ちていた。
影の中の影。
その闇の中を更に深い闇がゆっくり移動している。
移動している闇は人型であった。
巨大な人型。
5メートルは下るまいその人型は『歩ヒョウ』と呼ばれていた。

(このあたりか・・・)

蘭丸は不意にその動きを止めた。
目前に連なる岩盤に何を見たのか、蘭丸は地に・・・正確には岩盤にである・・・伏せたまま移動を再開、さらに10メートルほど進んだこの場所で再び動きを止めた。
そして『歩ヒョウ』の右手人差し指を近くの岩盤の窪みに潜り込ませる。
次に軽くその指をひねるとバリッという微かな振動と共に一辺が50センチほどの岩を手にしていた。
その岩を人差し指と親指で軽く前方へほおった。
飛翔する岩はゆっくりと進む。
1メートル。
2メートル。
3メートル。
そして・・・消えた。

(やっぱりな)

ホログラム映像であった。
先程停止した場所で蘭丸は闇の中に突如として現れた小岩を見逃さなかったのである。

(さて、始めようか)

盗賊の船である。
それなりの武装はしていよう。
先日取り逃した『緋』の『歩ヒョウ』もいる。
いや、だからこそ行くのか。

「見つけたぜ」

ヘッドセットのマイクへ静かに告げる蘭丸。
それは、この通信をどこかで聞いているはずの天道に向けたものか、自分自身に向けたものか。
次の瞬間、『碧』の『歩ヒョウ』は纏(まと)っていた闇を脱ぎ捨てホログラムの岩盤にダイブした。





次章予告

ホログラムの岩盤に身を躍らせた『碧』の『歩ヒョウ』
その内部で待つものは・・・何者

外伝 第12巻
次章:第8章 Trap 罠

『文句(もんく)があるなら、かかってこいよっ』
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