星乱拳客伝 外伝 −三つ目−
暗く狭いコクピット。
そこで蘭丸は待っていた。
新たなる敵を・・・
現れるはずの敵の名は『トミー・ザ・キャット』。
名も知らぬ『歩ヒョウ』の実力やいかに。
TOMMY THE CAT
第1章 Waiting For The Man
待人
闇の中に赤や緑の光点がいくつか灯っている。
BGMは通信機からもれる無音の雑音であった。
午前二時。
トレーラーの運転席(ドライバーズシート)に腕を組み、両足をハンドルの上に投げ出した蘭丸は目を閉じていた。
(「D3地区のスクラップ置場で待っていてください」)
昨日の天道の言葉が浮かぶ。
(「3日後の深夜0時すぎに『トミー・ザ・キャット』が現れます」)
どこで盗賊と繋がっているのかは不明だが、情報に間違いはないのは今までの経験上、解っている。
(「そこで『歩ヒョウ』を押さえてください」)
まるで菓子パンを買いに行くかのような口ぶりである。
蘭丸が『歩ヒョウ』が現れなかった場合の事を問うと。
(「無線を用意しておいてください、指示はその時に。でもきますよ・・・きっとね」)
いつもの微笑に押されるように部屋を出た蘭丸は今指定されたスクラップ置場で待っている。
(今回は外したか・・・)
狭いシートの・・・主な原因は彼の体格にあったのだが・・・中でそう思った時、通信機から聞いた事のある声が、
「そちらへ向かいました」
と意外にクリアな音声で伝えてきた。
ゆっくりと目をあけ古めかしいLEDが点る操作盤をチェックする。
このスクラップ置場へ通じる道にいくつかセットしておいたセンサーに連動している操作盤だ。
いまのところ全てグリーン・・・通過者なし・・・である。
少しのあいだグリーンの光を睨んだあと、通信機に向かって何か言ってやろうと思ったその時であった。
(きやがった)
一番右のLEDが赤く点灯していた。
次章予告
深夜。
人気のないスクラップ置場へ一台のトレーラーが向かっていた。
何の変哲もない大型車両。
その目的は・・・
外伝 第12巻
次章:第2章 Intruder 侵入者
『文句(もんく)があるなら、かかってこいよっ』
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