星乱拳客伝 外伝 −三つ目−


勝負はついているはずのこの戦い。
加茂のルールを無視した攻撃に倒れた蘭丸。
この決着、はたして・・・

星乱拳客伝 外伝 −三つ目− 第11巻

THE BLUE MASK



終章 THE WINNER 勝者


それから数分後。
二人は一階客席最前列に並んで・・・一席空けて・・・座っていた。
照明は消されており作りかけの天井から星、いやコロニーの向こう側の内壁にへばりついた街明かりが薄く透けて見えた。

「どっちが勝ったと思う」

問うのは加茂である。

「そりゃ、俺だよ」

どこかしっくり行かないように蘭丸。

「そうか?じゃ、なんでお前の『歩ヒョウ』は、あそこに寝転がってるんだ」

薄闇の向こうに横たわる『歩ヒョウ』=『レン』は海の底に沈んだ遺跡のようであった。
返す言葉の見つからない蘭丸に加茂は言葉を継いだ。

「アリーナの端、俺がそこを踏み超えたと思ってるんだろ?」

加茂も蘭丸も天を仰いでいる。

「しかし、俺は踏み越えちゃいねぇ」

何か言おうとした蘭丸を制するように更に加茂が続ける。

「仮に・・・仮にだ、踏み越えていたとしても気を抜くべきじゃない」

反論しようかとも思ったが、少しではあるが気を緩めたことは自分が一番良く分かっている。

「あんたの戦い方があんまり真っ直ぐだったもんでね、ちょっと悪さをしたくなったんだよ」

大きく伸びをした加茂は少し間を置いて、

「『二代目』。あんたはまだまだ強くなる」
「しかし、その真っ直ぐさが逆に命取りになりそうでな・・・」
「説教って柄じゃねぇが、なんとなくな」

俺も年だなと小さく笑うと大きな男は立ち上がった。

「じゃあな『二代目』、楽しかったぜ」

そう言うと出口へ向かう。

「加茂さん。またいつか『勝負』してもらえませんか」

立ち上がった蘭丸の言葉が加茂の背中に届いた。

「冗談じゃねぇ。俺は負ける勝負はしねぇことにしてるんだ」

出口の角を曲がるとき蘭丸のほうを向いた加茂が小さく手を振りながらそう言った。




外伝 第11巻

『文句(もんく)があるなら、かかってこいよっ』
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