星乱拳客伝 外伝 −三つ目−


前半とはうって変わった加茂は、意外なほどあっさり場外へ出た。
これが加茂の実力なのか、その真意とは・・・

星乱拳客伝 外伝 −三つ目− 第11巻

THE BLUE MASK



第9章 THE BOUT VIII 勝負(8)


加茂の『歩ヒョウ』=『D・D』の左脚がグリーンの外周部の上にある。
初めに加茂が自ら口にした『ルール』の負け条件である。
蘭丸が最後に放った右足刀を下ろした。
その刹那であった。
巨大な加茂の『歩ヒョウ』=『D・D』の左手が蘭丸の『歩ヒョウ』=『レン』の頭部に伸びた。

(なに?)

反射的に身を引く蘭丸であったが、万力のような力で引かれた加茂の左手に右手が加わり下方向への力が加わった。
斜め下に顔面を突き出した蘭丸『歩ヒョウ』=『レン』のその顔面に巨大な質量を有した物体が猛スピードで迫る。
それは・・・

(やられた)

痛めていたはずの左脚、その膝であった。

みしいぃぃ

辛うじて両腕のガードを上げた蘭丸であったが、その衝撃は強烈であった。
そして、さらに一発。
もう一発。
合計三度の膝が立て続けに放たれた。
三度目の膝のあと開放された蘭丸の『歩ヒョウ』=『レン』は放物線を描きつつふっ飛んだ。
轟音と共に受け身もとれずに地面に叩きつけられる。

「おぉい、大丈夫か・・・」

加茂が胸部の纏(まと)いを解いて身を乗り出す。
戦いの最中に纏(まと)いを解く事は自殺行為である。
加茂にその行動を取らせたのは彼本来の優しさであり、勝利に対する絶対の自信のなせる技であろう。
と、何かが動く気配。
それは、蘭丸の『歩ヒョウ』=『レン』が地面に両手を突いた動きであった。
そして、きわめてゆっくりとした動作であったが膝を突き立ち上がろうとしていた。

「ほう」

加茂の短い感嘆の言葉には、恐怖の成分が少なからず含まれていた。
しかし、蘭丸の『歩ヒョウ』=『レン』の動きは不意に止まり、静かに仰向けに倒れた。

からからから・・・・・・

胸部の纏(まと)いが解けると、蘭丸が姿を現した。
風呂から上がったかのように全身に汗をかいている。

「汚ねぇぞ、おやじ」

とりあえず怪我は、なさそうである。




次章予告


勝負はついているはずのこの戦い。

加茂のルールを無視した攻撃に倒れた蘭丸。

この決着、はたして・・・

外伝 第11巻
次章:終章 THE WINNER 勝者

『文句(もんく)があるなら、かかってこいよっ』
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