星乱拳客伝 外伝 −三つ目−


嵐のような蘭丸の猛攻。
しかし有効打は未だない・・・
加茂という名の巨大な壁には、お前の拳は通用しないのか蘭丸よ。

星乱拳客伝 外伝 −三つ目− 第11巻

THE BLUE MASK



第7章 THE BOUT VI 勝負(6)


打ちあう二者の間を流れた時間は3分ほどであった。
この短い時間を全力で戦うことの意味を知る者は少ない。
通常、見知らぬ者同士の戦い・・・いわゆるストリートファイト・・・では20〜30秒ほどで決着がつく。
戦う者同士の力量が違う為である。
これを競技として捉えた時、戦う二者の差を縮める為に体重等の様々なカテゴリーで分類してゆく。
そうする事によって競技としての戦いが成立するのである。

(手加減してるんじゃねえのか?)

蘭丸の危惧は、己の全力をもってしても底の見えない加茂の戦い方ゆえであった。

(負けないように戦ってやがる)

加茂は蘭丸の放つ打撃技を払いつつ攻撃と攻撃の継ぎ目に掌を打ち込んでくる。
防御に重点を置いた組み立てをしていた。
こういう戦い方をする敵の隙を突くのは至難の技である。
蘭丸得意の間接技に持ち込もうと何度か試みてはみたが、いずれも失敗に終わった。
間接技に力は不必要という者がいるが、それは間違いである。
正確には間接技が決まった場合、比較的弱い力で相手を押さえられるということである。
取る、ひねる、押さえる、3つの動作を経て間接技は決まるのである。
拳を当てるより難しいと言えるかもしれない。
相手が加茂のような人間ならばなおさらである。

やがて嵐のような蘭丸の猛攻も次第におさまって行く。
討つ手がないのである。
しかし攻撃を緩めると、加茂の重い左右の掌が襲いかかってくる。

ゴウ

(やべっ)

加茂の左掌が顔面を襲い、これを間一髪腕の下に潜り込んでかわした蘭丸。
そして懐に潜り込んできた蘭丸を待っていたかのように右掌がフックぎみに振られた。
頭上に加茂の左腕、左からは加茂の右掌・・・
この状況にあって蘭丸は両手をクロスさせ加茂の右掌を受けつつ右前蹴りを加茂の左腿に叩きつけた。

ぎしいぃ

両者の歩ヒョウが軋む。
蘭丸の『歩ヒョウ』=『レン』はふっ飛び、加茂の『歩ヒョウ』=『D・D』は膝を落した。




次章予告


ぎしいぃ

異様な音が無人のホールに響く。

続く落下音と擦過音がそれを掻き消す。

膝を落した加茂と、地に伏した蘭丸。

一瞬の気の緩みに潜り込んできた加茂の掌に、

蘭丸はこのまま・・・

外伝 第11巻
次章:第8章 THE BOUT VII 勝負(7)

『文句(もんく)があるなら、かかってこいよっ』
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