星乱拳客伝 外伝 −三つ目−


追い詰められた蘭丸
加茂の巨大なプレッシャーの前にこのまま引き下がるのか
大きく加茂に傾いた形勢を覆すことができるのか
戦いは始まったばかり。
『ヒョウ師』たちの夜は長い。

星乱拳客伝 外伝 −三つ目− 第11巻

THE BLUE MASK



第5章 THE BOUT IV 勝負(4)


「二代目、後がねぇぞ」

加茂がアリーナの外周部に追い詰められた蘭丸にかけた言葉である。
その時、目前の碧い『歩ヒョウ』から何かが抜け落ちた。
微妙にずれていた焦点(フォーカス)が修正されたような感じであろうか。
加茂には目前の碧い歩ヒョウを操っている蘭丸の気持ちがよく解っていた。
蘭丸という名の若者がこの戦いの意味を見出せないでいたのを窮地に追い込んだことによって救い出したのである。

(いいねぇ)

立ちあがった直後に放った左の前蹴り三連発。
牽制であろう蹴りには一撃で相手を沈めるパワーが秘められていた。
加茂はその三発全てを右手で弾くと半歩間合いを詰め左掌を走らせる。
一撃目と同様の太い一撃を右へ避けるのか左へ避けるのか。
蘭丸はそのどちらも選ばなかった。
第三の選択肢は『上』であった。

(ぬっ)

加茂の繰り出した左掌。
その手首に蘭丸は組んだ両拳を叩きつけ、跳び箱を跳ぶ要領でふわりと舞いあがった。
左肩口に不意に現れた蘭丸にさすがに慌てた加茂は右掌を突き上げこれに対した。
しかし蘭丸はその時すでに不十分な態勢ながらも空中で右回し蹴りを放っていた。

ぎちいぃぃぃぃ

蘭丸の蹴りが加茂の左後頭部を直撃するのが僅(わず)かに早かった。
全体重を乗せた蹴りは蘭丸の『歩ヒョウ』=『レン』を加茂の『歩ヒョウ』=『D・D』の右後方へ運び、
その後を追った加茂の右掌は空を切った。

「形勢逆転ってやつだな」
蘭丸の『歩ヒョウ』=『レン』の髪が無風のホールに揺れていた。





次章予告

ついに本領を発揮しはじめた蘭丸

加茂の圧倒的パワーと完成した技術に対抗することができるのか蘭丸よ

外伝 第11巻
次章:第6章 THE BOUT V 勝負(5)

『文句(もんく)があるなら、かかってこいよっ』
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