星乱拳客伝 外伝 −三つ目−

三日前
偶然知り合った、一人の『ヒョウ師』
交わした『約束』
「勝負すっか・・・若いの」
蘭丸の背中を一つ叩いて出ていった彼は・・・誰?

星乱拳客伝 外伝 −三つ目− 第11巻

THE BLUE MASK



第1章 THE STRANGER
旅人

午後二時。

「昼メシ食べ損ねちゃって・・・」

その喫茶店に入ってきたのは蘭丸であった。

「ちょうどいいや、オレもこれから昼飯だ。一緒に食ってけや」

厨房から聞き慣れた声が返ってくる。
バブさんである。
この喫茶店のマスター『バブさん』は、蘭丸がいつも『歩ヒョウ』の修理やカスタマイズを
頼んでいる『職人』でもあった。

数分後、店のメニューにはないオムライスを二人で食べている時、
彼はやってきた。

「こんにちは。バブさんは・・・おっ、いたいた」

薄い茶のスーツのビジネスマン。
身長は180cmほど、年齢は30代後半くらいか、
がっしりした体格から漂う雰囲気はかなりの『切れ者』に見えた。

「アレの調子はどうでした?」
「ここしばらく、まともに動かしてなかったもんで・・・」

「大丈夫ですよ、どこにも異常はありませんでしたから」

「バブさんに、そういってもらえると安心しますよ」
「そうそう使うような代物じゃなんですが」
「手入れだけはちゃんとしとかないと気が済まないんですよ・・・」

「ははは、そういうもんですよ」
「そうそう、こいつを紹介しましょう。榊 蘭丸(さかき らんまる)、『ヒョウ師』です」

「加茂(かも)です。私も『ヒョウ師』でしてね」

「どうも、榊です」

握手を交わす蘭丸と加茂。

「榊さんて・・・どこかで・・・」

思案中の加茂にバブさんが、

「『三つ目』ですよ」

「思い出した・・・藤十朗さんのところの・・・」

蘭丸の中に藤十朗の姿を見るように目を細めて、

「ほぅ・・・きみが二代目か」

加茂は言った。

「いや、まだまだですよ」

『ヒョウ師』として扱われることに慣れていない蘭丸は、
要領の得ない返答をする。

「今日は、ゆっくり出来るんでしょ加茂さん」

加茂にコーヒーを出しながらバブさん、

「実は仕事の途中で・・・これからまだ行くところがありまして」

「残念ですね・・・」

「私も残念ですよ、せっかく『三つ目』と会えたのにね・・・そうだ」

何を思い付いたのか蘭丸の方を向き直って、

「勝負すっか・・・若いの」

そう言った。

「勝負ですか?」

「そう勝負。フィガロア通りに建設中の多目的ホールを知ってるかい」

「知ってます」

「その関連の仕事をしててね・・・3日後の深夜、そのホールで勝負てのはどうだい」

「勝負・・・」

蘭丸が『勝負』という言葉をどう扱っていいものか迷っているあいだに、

「おぅ、もうこんな時間だ。バブさん『歩ヒョウ』は?」

「こっちです」

そう言いながら、二人は店を出て行ってしまった。

「じゃあ、3日後に・・・」

加茂のその一言を残して。





次章予告

深夜。

未完成のホールに明かりが灯る。

『加茂』と『蘭丸』

見守る者もないこのホールで、

二人の『ヒョウ師』が繰り広げる『勝負』とは・・・

外伝 第11巻
次章:第2章 THE BOUT I 勝負(1)

『文句(もんく)があるなら、かかってこいよっ』
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