星乱拳客伝 外伝 −三つ目−

立て膝をついて虚空を睨む、碧い『歩ヒョウ』。
その背後に忍び寄る巨大な影・・・
気付いているのか蘭丸よ、
この不利な体勢から如何にして・・・

星乱拳客伝 外伝 −三つ目− 第10巻

COLD METAL



第6章 the silent fight (BLACK I)
静なる闘い(黒1)

宇宙海賊。
その戦利品運搬用の巨大貨物船。
大きな椀(わん)を伏せたようなドーム型の船体に、
立て膝をついた姿勢でへばりつく巨大な人影。

碧い身体
束ねられた長髪
そして、三つの目

『蘭丸』の『歩ヒョウ』=『レン』である。
その背後に迫る、『歩ヒョウ』に劣らぬ巨大で無骨な人型・・・
ビルドアーム。
そう、宇宙海賊のビルドアームであった。
手には先ほど蘭丸が葬ったビルドアームが持っていたのと同様の八角棒が握られている。
二体の間の距離、およそ20mほど・・・そして慣性の法則に従って次第に近づきつつあった。

15m・・・動かない、碧い『歩ヒョウ』

10m・・・気付かないのか『蘭丸』よ

5m・・・手にした八角棒を高々と振り上げるビルドアーム

「死にさらせぇ」

叫びつつ、振り上げた八角棒を碧い『歩ヒョウ』に・・・

と、背後の闇が動いた。
漆黒の宇宙空間よりも更に濃密な人型の闇。
その闇を駆る者はこう呼ばれていた『天道 歩』と・・・

一方、八角棒を振り上げたまま彫刻のように動かなくなったビルドアーム。
その脇腹を軽く・・・町中で人を避けるよりも軽く・・・押した『天道』の黒い『歩ヒョウ』
と、そのまま横に滑り・・・一個の鉄塊に成り下がったビルドアームは漆黒の宇宙空間に漂い出た。

『ホントに殴らせるのかと思ったぜ』

立て膝をついた姿勢のまま、後方を振り返りながら、碧い『歩ヒョウ』=『蘭丸』が光信を送る。

『スリルは人世のスパイスですからね』

黒い『歩ヒョウ』=『天道』か返す。

『詩人だな』

『誉められたと思っておきましょう』

光信を交わす碧と黒の『歩ヒョウ』
その前方にまた新たなビルドアームが現れた。

『どんだけ、出て来りゃ気が済むんだ』

新たな分銅とワイヤーの準備を始めた蘭丸を制するように、
碧い『歩ヒョウ』の前に進み出た黒い『歩ヒョウ』

『きりがありませんね・・・私がケリを付けましょう』

ゆっくりと歩き始めた黒い『歩ヒョウ』・・・
その巨大な背中に描かれた『テントウ虫』を見つめながら蘭丸は思った。

(漆黒の悪魔・・・)




次章予告

新たなビルドアームに向かって、歩き始めた『天道 歩』

無重力の宇宙空間を気にする風もなく飄々を歩みを進める

蘭丸の歩ヒョウと同様に、自立航行する性能はない筈だが・・・

そして『ケリを付ける』とは一体・・・どう言うことなのか。

外伝 第10巻
次章:第7章 the silent fight (BLACK II) 静なる闘い(黒2)

『文句(もんく)があるなら、かかってこいよっ』
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